世界最大級の総合コンサルティング企業・アクセンチュアでは、ウェザーニューズ社の気象データ提供・分析サービス「ウェザーテック(WxTech®)」を導入。クライアント企業のデータに、ウェザーニューズの気象データを掛け合わせることで、新たな視点の分析を行い、ソリューションに役立てています。
アクセンチュア株式会社 ビジネス コンサルティング本部 AIグループ シニア・マネージャーの中畑良介氏に「ウェザーテック」導入のきっかけとなった事例や社会への影響などをお聞きしました。
気象はあらゆる業界に影響を及ぼす要素
アクセンチュアでは、分析モデルの高度化に気象データを活用することを考えるなか、まず初めに航空会社のコンサルティングに「ウェザーテック」を導入しました。
「アクセンチュアの『AIグループ』では、先端のデータ分析を武器に企業の支援を行っています。近年はデータが急増し、膨大なデータを集めることが可能ですが、最適なソリューションを導くためには、データが多ければ多いほど効果的というわけではありません。ビジネス課題に対して戦略的かつ的確にデータを統合する必要があります。
今や気象は多くの企業にとって重要なデータとなっています。衣料や食品・飲料などのメーカーが、気象データに基づいて需要を予測するのはもちろんですが、集中豪雨や大型の台風などによる大規模災害が頻発する近年は、自然災害に対して企業がどれだけリスク管理できているかが、業績に影響する時代です。
リスク管理もできる気象データを、分析モデルに取り入れることが、多くの企業にとってより高いビジネス効果を生み出すためには必須であると考えました」(中畑氏)
データの細かさ、予報精度、カスタマイズ可能なところを高く評価
現在、企業向けの気象データの提供は複数の企業で行われていますが、ウェザーニューズの気象データを選んだ背景には、将来的に幅広い領域で活用することを念頭に、複合的に評価した結果だといいます。
「導入の決め手は大きく3つあります。1つ目は、“1kmメッシュ”の非常に細かいデータがとれること。例えば、過去データは気象庁のアメダスなども利用できますが、ウェザーニューズはより細かく、ピンポイントのデータを得ることができます。
2つ目は、予測精度の高さです。アクセンチュアは未来に何が起こるかの予測を踏まえたうえで、企業が取るべき最適なアクションを提案する必要があるため、予測の精度が重要です。他社の実績も含めて数か月ほど検証したのですが、ウェザーニューズの予測はばらつきがなく安定しています。
3つ目は、各企業に合わせてカスタマイズされたデータ提供が可能なこと。アクセンチュアの業務では、あらゆる業種、全領域にわたって対応できるデータが必要とされるので、フレキシブルに対応してもらえることも評価の基準となりました」(中畑氏)

気象データが加わった深い分析で最適な提案が可能に
航空会社の事例では、気象に合わせた搭載燃料の最適化が行われています。ほかにも、業種に応じて企業のコンサルティングへの活用が進んでいます。
「これから活用が進むのは、中長期の気候変動にともなう企業の危機管理の分野です。例えば、30年後には気温にともなう海面の上昇で、沿岸の工場や倉庫、農耕などが継続できなければ、移転などを考えなければなりません。これには10年単位の長期計画が必要となってきます。
また、運送会社の安全運転指導への活用にも取り組んでいます。車のドライブレコーダーやデジタルタコグラフのデータ分析から運転挙動を観察し、運転者への注意喚起を行うサービスがありますが、これに気象データを組み合わせるのです。
運転者が荒い運転をしたとき、その理由にはカーブなど道路状況のほか、雨など気象の影響もあります。運転挙動のデータと気象データを組み合わせることで、より深い分析ができれば、“運転手個人の安全運転”だけでなく“運送業界全体のリスク軽減”につなげられることが期待されています。
このように気象データを活用することは、コンサルティングテーマの幅が広がるだけでなく、独自の分析モデルの作成にもつながり、他社との差別化にも役立っています」(中畑氏)
気象で新たな価値を創造し、企業活動を社会貢献につなげる
社会が大きく変わる時代に、企業に新たな価値を生み出す取り組みもなされているといいます。
「業界という昔ながらのくくりに意味がなくなりつつある現在、今までなかった組み合わせの会社がつながって活動し、新たな価値を生み出しているので、ジャンルを超えた企業の組み合わせには期待が持てます。
例えば、気温や雨の予測データを活用して、コンビニ店など小売の仕入れを最適化することはよく知られています。さらに進化して、気象情報の予測に合わせて価格を変更したり、雨で客足が減りそうであればスマホの位置情報をもとに近くにいる人に割引情報を周知して売れ残りを減らしたり、大規模な悪天候が予想されているのであれば工場での生産量や配送ルートを最適化するなど。通信会社や物流企業というように業界を越えて“上流から下流”まで多方面からアプローチすることが、新たな価値創造をもたらしています。
また、気象災害への対応も私どもが取り組むべきテーマの一つです。気象データを活用して災害時の避難方法や防災方針を国や自治体と協力して作り上げることもできます。国や自治体が蓄積したデータと気象データを組み合わせて、我々が有益なデータ分析を行うことで、社会に還元できることが増えると期待しています」(中畑氏)
120ヵ国以上で企業や政府を顧客に持つ世界最大級の総合コンサルティングのアクセンチュア。社会貢献やエコシステムといったビジョンをもって企業活動に取り組むためにも、今後、気象データはより一層欠かせないものになるといいます。