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株式会社あぐり翔之屋

九条ねぎ栽培にIoT活用、スマート農業で高品質と安定供給を実現

  • 株式会社あぐり翔之屋
  • 代表取締役 森上 翔太氏

京都伝統野菜の代表格「九条ねぎ」の生産に特化した株式会社あぐり翔之屋では、質の高い九条ねぎの安定供給を叶えるため、ウェザーニューズ社が提供している「ウェザーテック(WxTech®)」のサービスの一つである高性能気象loTセンサー「ソラテナ」を導入しています。

ソラテナの具体的な活用法について、あぐり翔之屋の代表取締役である森上翔太氏に話を聞きました。

“天候が一番のリスク、畑の気象データがリスクヘッジの鍵”

京都の南部、山城地方の自然豊かな地に育つ京都の伝統野菜「九条ねぎ」。柔らかな口当たりと凝縮された豊かな香りが特長の九条ねぎの生産において、一番のリスクは「天候」だといいます。

「ほかの農作物と同様、九条ねぎもまた台風や大雨など自然災害による農業被害を最小限に抑えたい。四季を通じて生産可能な九条ねぎだからこそ、質の高いものを安定して提供したいという思いがありました」(森上氏)

株式会社あぐり翔之屋 代表取締役 森上翔太氏

天候のリスクという恒常的な課題が背景にあるなか、森上氏がソラテナの導入を検討するきっかけになったのは海外視察を体験したことでした。「自国の農業だけしか知らないのでは世界から取り残されると考えた」という森上氏は、イギリスで70年前からスタートしている奨学金制度の ナフィールド・インターナショナル・ファーミング・スカラーシップ(Nuffield International Farming Scholarship)に応募。 ナフィールドジャパン( Nuffield Japan)第一号のスカラーに選出され、世界中から集結した80名のファーマーとともにさまざまな国に赴き、大規模なファミリー経営をはじめとする多様な農業を学ぶという貴重な経験をしました。

「農業先進国の実情をいろいろ学ぶなか、今の日本の農業にまず必要なのはデータだと気づきました。これまで勘に頼ることが多かったことも、集積したデータを活用することにより農作業の精度を高められるはずです」(森上氏)

特に異常気象が常態化している昨今は、安定供給を継続するためにもデータに基づく農作業が必要不可欠――そう確信した森上氏は、帰国後にソラテナを知り、導入に至ったといいます。

2021年2月にソラテナを設置し、気象データ収集を始めた

“農作物へのダメージ回避に8種類の観測データを活かす”

ソラテナで観測できる、1分ごとに変化する風速、風向、雨量、気温、湿度、気圧、照度、紫外線といった8種類の観測データはすべて農業にとって大事な要素。特に「風」「雨」「温度」の精緻なデータは、今後の九条ねぎの生産に大きく影響すると考えています。

たとえば、風。ほかの種類のねぎに比べ、九条ねぎは強風に弱いという特徴があります。強風により途中から折れてしまった畑の九条ねぎは商品価値が下がります。そのため、保温の目的もあるトンネルと呼ばれるビニール製の覆いを装着し、風のダメージを防ぐようにするのが必須。ところが風速8m/s以上になると、トンネルが飛ばされるという事態が多発することもあると言います。

「ソラテナで最大瞬間風速のグラフをチェックできるようになったことで、トンネルが飛ばされたり、作物がダメージを受けたりする前に、適切な対策を立てられるようになりました」(森上氏)

2021年2月からソラテナを導入し、今年はじめて迎える夏のデータにも注目しているといいます。「去年は台風の襲来こそ免れたものの、7月は長雨が続き8月は高温少雨。せっかく植えた九条ねぎが根腐れして溶け、畑から消えてしまったこともあり、農作物にとっては過酷な状況でした。今夏はソラテナを導入したことで、土壌の水分量の増減やトンネル内の温度変化などを事前に察知し、根腐れや病気のリスクに早急に対応できそうです」(森上氏)

スマホやPCに表示されるソラテナの観測データ
風速、雨量、気温など8要素を1分ごとに観測する

“観測データを手軽に確認できることで、社内の共通言語が変わった”

ソラテナ導入後、社内の共通言語が変わったと森上氏は話します。観測データは社員それぞれのスマートフォンで簡単に閲覧できるため、朝の就業前はもちろん、休憩や移動のタイミングなど活用の機会が多く天候がより身近に感じられるようになったそうです。

「風が8m/sを超えそうなので畑の様子を見てきます」「ここ10分間で急激に降水量が増えていますが、どうしますか?」「氷点下が続いているので、そろそろ葉面散布の準備をしませんか?」などと、社員が閲覧した観測データに基づいた提案をリアルタイムで受けることも増えたと言います。

スマホなどで手軽にデータを閲覧できるので気象がより身近な存在に

また、九条ねぎの生育に大きな影響を及ぼす温度管理でも、ソラテナに対する期待が大きいそうです。

「ソラテナを導入する以前は、最寄りの観測所のある京田辺市からのデータを参考にしていましたが、私たちの畑がある場所とは標高や風土などに差があり、実際の気温などのデータにズレがあることも少なくありませんでした。

自分たちの農地にソラテナを設置することでピンポイントのデータが得られるので、生産性や品質向上の面でも大いに役立っています」(森上氏)

森上氏は、九条ねぎ食文化の普及と市場拡大を目指して、同じく九条ねぎ専門の農業を営む若手経営者3人で、2019年に生産、販売を手掛ける京葱SAMURAI株式会社を設立。九条ねぎを生産する畑の総面積では京都でもトップクラスを誇ります。

「安定供給に対するリスクヘッジの観点からも、京葱SAMURAIの農地は、南は木津川市から北は亀岡市まで京都府内の南北12市町村にまたがって点在しています。しかし、農地が広くなるほど温度管理が難しくなるので、今後はソラテナの増設も検討中です」(森上氏)

“現場の気象を見える化し、営農の新しいビジネスモデルの確立を目指す”

「ソラテナで集積したデータを九条ねぎの生育とリンクさせ、より活用していきたい」と今後の抱負を語る森上氏。現在は1日単位で閲覧している観測データを一週間、一ヵ月と長いスパンで集積していき、「なぜ、こんなに成長したのか?」あるいは「なぜ、品質が悪いのか?」という農作物の成果と観測データを重ねあわせていくことも考案中です。

「気象と実際の農作物の収穫データが残されていれば、安定供給や品質向上のための“次の一手”を打つことも可能になるからです。長期的に活用できる、独自の戦略ツールは今後の九条ねぎ栽培にとって大きな強みになるでしょう」(森上氏)

生産者の枠組みを大きく越え、次世代農業の発展にエネルギーを燃やす森上氏。現場の気象を見える化する「スマート農業」を率先して取り入れることで、営農の新しいビジネスモデル確立を目指します。

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