導入事例

有限会社だんだんファーム掛合

取締役農場長 小田達雄氏

野菜のハウス栽培に気象IoTセンサーを活用、外気の環境モニタリングで安定生産と効率的な働き方を実現

島根県雲南市の山間部にあるハウス内で農作物を水耕栽培する有限会社だんだんファーム掛合では高性能気象IoTセンサー「ソラテナPro」を導入し、高品質で安定的な野菜づくりと作業の効率化を実現しています。

ハウス栽培に観測データを活用するメリットや具体的な活用方法について、有限会社だんだんファーム掛合 取締役農場長 小田達雄氏にお聞きしました。

ハウス内の環境管理だけでは上手くいかず、安定栽培のカギはハウスの外にあった

「人を幸せにする野菜づくり」をコンセプトに掲げ、標高250mの水と緑に囲まれた自然豊かな丘陵地で野菜を栽培している有限会社だんだんファーム掛合。1haの敷地に18棟のハウスを設置、ネギ、サラダホウレンソウ、サラダ水菜、ミニセロリなどを通年で水耕栽培しています。2007年からはハウス内の環境計測をはじめ、取得したデータを活用したスマート農業に取り組んでいるとのこと。

有限会社だんだんファーム掛合

「ハウスのある掛合(かけや)地区は梅雨や冬季には曇天が続くなど、ほかの生産地に比べ日照時間が少ない地域です。たとえば、掛合の年間日照時間がわずか約1,400時間なのに対し、四国や広島などの太平洋側では約2,000時間以上になります。ハンディキャップがある地域で収量を上げ、品質を向上させるためにはスマート農業の実践は必要不可欠でした」(小田氏)

データを活用した農業を続けるなかで、新たな課題も露見したといいます。

「ハウス内の温度や湿度を同じ条件下に設定しても、なぜか農作物の品質に差が出るケースがありました。原因を探るうち、ハウスの内側ではなく外側、つまり外気の環境要素が農作物の出来具合に大きく影響している可能性が浮上したのです」(小田氏)

そこで、温度計をハウス外に設置するなどしてデータ収集を試みたものの、日射や地形などの影響を受け、正確な測定が困難でした。また、近隣には気象庁のアメダス掛合がありますが、観測はリアルタイムではなく、標高差や距離も少しあることから、ハウス外の精緻な状況把握には至りませんでした。

「そんなタイミングで『ソラテナPro』の存在を知り、補助金制度を活用して導入に踏み切りました」(小田氏)

有限会社だんだんファーム掛合 取締役農場長 小田達雄氏
有限会社だんだんファーム掛合 取締役農場長 小田達雄氏

外出先から気象状況を遠隔監視できるので、夜間や休日も安心して休めるように

屋外環境が影響すると判明してからというもの、ハウス内や周辺で作業するときは「ソラテナPro」でハウス外の気温・湿度・雨量・風向・風速・照度の観測データを確認し、栽培管理を徹底しているといいます。

「これまでは屋外の状況は考えずにハウス内環境設定を一律に設定していましたが、導入後は外気の環境にあわせて調節しています。例えば、外気温の上下でハウス内の設定温度を変更しています。また、風速や風向、日射、雨量の影響も受けることから、ハウスの窓の開閉や遮光カーテンをするなど細かく調整していきます。

加えて、屋外の環境は農作物の病害リスクに密接に影響していることもわかってきました。外気の環境を考慮にいれることで、今まで解決できなかった現象にも対処できるようになりました」(小田氏)

ハウス周辺に設置された気象IoTセンサー「ソラテナPro」
ハウス周辺に設置された気象IoTセンサー「ソラテナPro」

一方、夜間や休日などハウス周辺にスタッフがいないときは、スマートフォンを使って遠隔地から観測データを確認しているとのこと。

「ソラテナProを導入する前は、近隣の気象情報を参考にするしか選択肢がありませんでした。そのため、突然のゲリラ豪雨などの天候変化に対応すべく夜間にハウスに駆けつけたものの実際には問題がなく、無駄足に終わることもありました。導入後は、手元のスマートフォンでリアルタイムの正確なデータを確認できるので、出張中でも適切な指示ができるだけでなく、夜間や休日も安心して休めるようになりました」(小田氏)

作業しながら観測データや天気予報を確認できる
作業しながら観測データや天気予報を確認できる

出来が良い日も悪い日も、なぜそうなったのかを過去データで検証して大幅に生産性アップ

ソラテナ導入後は、ハウス外の気象データに基づく栽培管理によって農作物の品質が安定し、作業効率の向上にもつながっていると話します。

「天候変化による影響を早めに察知できるようになったため、適切な対策を講じやすくなりました。『ソラテナPro』に蓄積されたデータをたどれば、なにか問題が起こったときでも『なぜ、そうなったのか』という検証が可能なので、次に活かすこともできます」(小田氏)

アプリから雨雲や雲の状態などの気象予測を確認し、加えて、現在はライブカメラも活用して今の雲の動きや空模様を映像で確認することで、ハウスの状況をより正確に管理できるようにもなったといいます。

「最初に『ソラテナPro』で屋外の観測データを確認する、という共通認識がスタッフ間でも定着しています。屋外の環境を把握することでハウス内の現象が説明しやすくなりました。これは、若手や経験の浅いスタッフに技術を継承していくときにも役立っています。農業は勘や感覚がとても大事な要素ですが、それを数値で伝えたほうがわかりやすいうえに、はるかに効率もいいです」(小田氏)

リアルタイムの観測データと分析力で気候変動に適応していきたい

これからの農業は観測データを瞬時に栽培のコントロールに活かす時代だといいます。

「ここ数年で顕著になってきた気候変動に、農作物の栽培管理も適応していくことが求められると思っています。野菜が高騰している昨今の市場からもわかるように、これまでと同じ方法では、同じ品質や収量を保つことができない。昨年はこうだったから、こんな準備や対策をすると念入りに計画を立てても、昨年のデータが今年には役に立たなくなっています。

打開の鍵は屋外の環境計測にあると考えています。地球温暖化によってこの傾向が強くなってくるとすれば、いま必要なのはリアルタイムの観測データと、これまでの経験を踏まえた正確な分析力。そのためにも『ソラテナPro』は欠かせない存在です」(小田氏)

有限会社だんだんファーム掛合は、これからも気象データを最大限に活用しながら農作物の高い品質と生産性の持続的向上を目指します。

有限会社だんだんファーム掛合

有限会社だんだんファーム掛合

業界

事業内容

農産物の生産および販売(細ネギ、サラダホウレンソウ、サラダ水菜、ミニセロリなど)

特徴

高品質な農産物の安定供給のため、ハウス栽培に「ソラテナPro」を導入

規模

1〜50名

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