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株式会社東急パワーサプライ

電力市場のニーズに合わせた気象データで、需要予測の精度が大幅に上昇

  • 株式会社東急パワーサプライ
  • 企画室 需給管理センター グループ長 三枝和彦氏、マネジャー 猪口達也氏、チーフ 海老原直人氏

2016年4月にスタートした電力小売全面自由化により電力市場に参入した東急パワーサプライ。17市区の自治体に人口550万人を擁する東急線沿線の顧客基盤を強みに躍進を続ける背景には、電力の需要予測にウェザーニューズが提供する気象データを導入したことも奏功しているといいます。

電力を安定的かつ合理的な価格で供給することに、気象データをどのように役立てているのか、東急パワーサプライ 企画室 需給管理センター グループ長の三枝和彦氏、同センター マネジャーの猪口達也氏、同センター チーフの海老原直人氏にお聞きしました。

“気温1℃上昇で電力消費は大きく変動する、高精度な気温の予測が安定運用の鍵”

電力自由化を見据えた電力システム改革によって、電気事業の形は発電事業・送配電事業・小売電気事業という事業類型に区分されました。小売電気事業にあたる東急パワーサプライは、顧客のために必要な電気を調達し、供給する役割を担っています。

「電気は、蓄えておくことができません。『発電=消費』になります。小売電気事業者は『1日の需要を30分単位で予測し、それらに見合った電気をどの発電事業者や市場から、どのくらいずつ調達するか』という計画を前日12時までに策定し、あらかじめ送配電事業者に知らせる必要があります。電力業界では30分単位のことをコマと呼んでいますが、立てた計画は当日、当該コマがゲートクローズする1時間前まで変更が可能。その後、送配電事業者から電気を届けてもらう仕組みになっています」(三枝氏)

株式会社東急パワーサプライ 企画室 需給管理センター グループ長 三枝和彦氏

予測していた需要量にズレが生じた時や、太陽光など極端に発電量が増加・減少した時など、当初の計画と実際に必要な電気の量の実績に差が生じた場合には、送配電事業者が過不足分の電気の調達をコントロールしてくれるといいます。ただし、その場合、小売電気事業者および発電事業者は送配電事業者に対し「インバランス料金」としてペナルティを支払う必要があります。

「2022年にはインバランス料金制度が見直される予定で、計画と実績に差が生じた場合のペナルティがより大きくなるかもしれず、小売電気事業者にとって需要予測のズレは、大きな損失を生じさせる可能性があります。損失のリスクを避けるには、できるだけ正確な需要予測をすることが重要となり、そのためにも天気や気温などの気象情報は欠かせません。電力消費量は、気象の変化に密接にかかわっているからです」(三枝氏)

例えば、気温が30℃を超えている夏、さらに1℃気温が上昇すると関東エリアでの電力消費量は約140万キロワットも増加すると言われています。変化する環境に合わせて、正確な電力の需要予測のもとに計画を立てるためにも、精度の高い気象予測データが求められるのです。

“電力市場特有のニーズに応える「EPI」で、予測の変動幅を事前に把握”

グループ会社の東急電鉄で以前からウェザーニューズの気象データを使用していた経緯があり、東急パワーサプライでも導入が検討されました。

「予測データの情報粒度がとても細かく、利用する電力需給管理システムとマッチしたこともあり、当社が事業を開始した2016年から、ウェザーニューズの気象データを導入しました。供給エリア各地点の気温や日射量、湿度などの10日間予報のデータを、同システムに取り込み、電力の需要予測をしています」(猪口氏)

株式会社東急パワーサプライ 企画室 需給管理センター マネジャー 猪口達也氏

気象データを活用することで、需要予測の精度向上に一定の成果はみられたものの、当時はまだ満足できる状態には至っていなかったといいます。

「顧客獲得数の増加や天気の急変など、さまざまな要因によって、需要予測が大きく外れることが度々ありました。100%一致させることは不可能ですが、できるだけ差を縮める方法はないか、模索が続きました。

事業開始からしばらくして天気の急変などにも対応できるよう、気温や湿度などの最大値と最小値の差がわかるような予測データはないか、ウェザーニューズの担当者に相談したところ、予測幅(ブレ幅)を把握することができる『EPI(Error Potential Index)』を提案してもらったのです。

例えば、気温の予測が高い方にブレる可能性がどの程度あるのかなど、予測値の変動幅がわかれば、大外れになるリスクが減らせます。そこで『EPI』の導入を開始し、それに合わせて数時間先から翌日までの至近需要を予測するツールも独自開発しました」(猪口氏)

“既存システムにEPIデータを組み込み、高精度な需要予測が可能に”

EPIデータをグラフによって可視化することで、専門チームが気象の予測幅を365日リアルタイムで目視確認しているといいます。

「EPIだけでなく、気象庁が発表している情報をはじめ、閲覧可能な気象情報はくまなくチェックしています。最終的な判断は人間がおこないますが、判断する際の材料として実際に目で見てわかりやすいデータをつくることができる点もEPIを活用する大きなメリットです。

さらに、需要の予測ツールにEPIデータを組み込むことによって、より精度の高い独自の需要予測を算出できるようになりました」(猪口氏)

“正確な需要予測で計画と実績の差を大幅に縮めて、損失リスクを軽減”

電力の需要予測が難しい理由のひとつとして、過去の事例が必ずしも参考になるとは限らない、という点もあげられます。たとえば、同じひとつの家庭を例にとっても、コロナ禍でステイホームが中心のライフスタイルになれば、当然、電気が使われる量もタイミングも以前とは変わってくるでしょう。

気象の変化以外にも、人の動きや社会現象といったさまざまな角度から需要予測を立てる必要があります。

それでもEPIの活用前と後を比較すると、需要予測の精度が格段にアップしたといいます。

「以前は30分単位の需要予測量と実際の需要の差が10%以上超えてしまうことが多くあり、この差を何とかどのコマも一桁台のパーセンテージに縮めることを目標に試行錯誤していました。

それが、EPIの導入をきっかけに、より高度なデータ分析が可能になったことで、需要予測の精度が大幅に向上しました。最近では30分単位の予測誤差が大幅に外れることも稀になり、目標レベルが維持できて、ロスの少ない電力調達ができていると実感しています」(三枝氏)

“家庭の太陽光発電の余剰電力の買取に、日射量データを導入して精度向上を狙う”

今後は、気象データを活用した太陽光発電予測にも注力していくといいます。「2019年11月からは、一般家庭における太陽光発電の余剰電力の買取サービスも開始しています。首都圏エリアでトップクラスの買取価格ということもあり、コンスタントに申し込み件数を伸ばしています」(海老原氏)

株式会社東急パワーサプライ 企画室 需給管理センター チーフ 海老原直人氏

太陽光発電の買取サービスに関する課題は、「より広範囲にわたる日射量データの必要性」だと話します。地域によって差があるものの、とくに時間と共に雲が変化する時など、天候の変化が大きい時の発電量予測にはより的確な日射データが求められます。

「各家庭に30分間でどれだけの日射量があるかを『点』で測るのは難しくても、測定範囲を広げた『面』でなら予測も可能になるはず。面ごとの日射量データを活用し、予測精度をより向上させていく予定です」(猪口氏)

継続して電力の安定供給に取り組む東急パワーサプライ。需給管理が難しいエネルギー市場の中で、高精度な需要予測を続けるためには、ますます気象データの分析が鍵になるといいます。

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