日本最大の発電会社であり、国内の約3割に電力を供給する株式会社JERAは、ウェザ―ニューズの「電力市場向け気象データセット」を火力発電の運用に活用しています。 電力の安定供給と経済性の両立という、難易度の高いミッションが求められる現場において、気象データAPIがどのように活用されているのか、株式会社JERA 電力需給統括部 需給オペレーション部 主任の大場裕貴氏にお話を伺いました。
近年の気候変動や再生可能エネルギーの導入で高まる運用の難易度。電力の「需要=供給」には高精度の気象データが不可欠
「夏は冷房、冬は暖房」というように、電力の需要は気温と連動しているもの。JERAが日々運用する火力発電の現場でも、業務の大部分が気温や天候の影響をダイレクトに受けるといいます。
「電気には、基本的に貯めておくことができないという絶対的な特性があります。そのため、私たち発電事業者は『どのくらい電気が必要とされるか(電力需要)』を常に予測し、保有する発電設備の運転計画や、それに用いる燃料の調達計画を決定していかなければなりません。発電事業を営むうえでは、10年以上の長期にわたる電源開発・燃料調達の計画から、年・月・日単位の運用計画にいたるまで、非常に幅広い時間軸で電力需要を予測していく必要があります」(大場氏)
電力需要は特に天候の影響を受けることから、以前より気象情報を活用してきました。しかし、近年、再生可能エネルギーの導入の影響を受けて火力発電が担うべき供給量の想定がさらに重要かつ困難になっています。
「かつては気温の予測を前年実績など過去データに頼る時代もありました。ですが、近年の気候に対して過去データだけでは予測が困難であり、予測が外れるほど、火力発電の運用や燃料調達の現場にしわ寄せがくることになります」(大場氏)

また、世界最大級のLNG(液化天然ガス)の調達や輸送、販売までを手がけるJERAにとって、火力発電の燃料となるLNG在庫のコントロールは、過不足が許されない非常にデリケートな業務のひとつ。調達には標準で約2か月のリードタイムが必要で、バイヤー交渉や船舶チャーター、港湾手配など、多くの工程を伴います。
「島国の日本は、パイプラインではなく海外からLNG船をチャーターして燃料を運んできます。手配が多過ぎれば燃料の余剰在庫に伴う多大なコストが発生しますし、逆に足りなければ最悪は電力供給に支障をきたします。だからこそ、より精緻な気象データに基づいて需要予測を行い、過不足のない運用を実現する必要があります」(大場氏)
電力需要の予測精度を向上。気温1度のズレを正確に把握して過不足をなくす
こうした課題に対し、JERAの火力発電では、「電力市場向け気象データセット」を活用し、電力需要の予測精度の向上に取り組んでいます。
「近年は太陽光発電などの再生可能エネルギーが普及してきたことで、火力発電にはベースとなる供給力に加えて、その変動を吸収するしわ取りの役割も求められるようになったことで、予測の重要性がさらに増しています。
例えば、晴天で太陽光による発電量が増加すれば、その分、火力発電で補うべき電力は減ります。つまり、電力需要から再エネの出力を差し引いたうえで、自分たちの発電計画を立てる必要が出てきます。
気温が1度違うだけでも、あるいは晴れか雨かの違いでも、数千キロワット単位の誤差が生まれてしまいます。そのため、月、週、日という3層の計画構造で高精度な気象データを取り入れ、過不足のない、経済的な運用を目指しています」(大場氏)
また、需要予測だけでなく、発電設備の「供給可能出力の算出」においても、気象データが活用されています。
「主力であるLNG火力のコンバインドサイクル方式の発電設備は、気温や気圧による空気密度によって、発電可能な最大出力が変化します。ガスタービンは外気温が低く、吸入する空気密度が高いほど、より多くの酸素を取り込めるため、出力が上昇する特性があるのです。
需要がどれだけあるかだけでなく、自分たちの発電所がその瞬間に最大でどれだけの電気を出せるのか。これを正確に見極めるためにも、高精度の気象データが不可欠となっています」(大場氏)

電力市場の運用ルールへの準拠のためには、30分毎×発電所のピンポイントの気象データが欠かせない
JERAが電力市場向け気象データセットを選んだ決め手には、実務との高い親和性がありました。
「他社と比較検討も行いましたが、私たちの独自のニーズに最も応えてくれたのがウェザーニューズでした。当社の発電所は関東、東海、東北と広範囲に点在しているため、発電計画を策定するためには、各発電所の地点毎のピンポイントな気象データが欠かせません。
また、電力の市場取引が30分単位で行われるため、当社の火力発電設備がどれだけ供給できるかについても、30分毎に細かく想定ができることが必須条件でした。通常の天気予報は3時間、一般向けアプリでも1時間単位ですが、電力業界では1日を48コマ・30分単位に分けて管理します。そのルールと整合した形で、1kmメッシュかつ30分単位の気象データを提供してもらえる点が、大きな強みでした」(大場氏)
自動連携が現場の業務効率化に直結。お客さまへ安定的かつお手ごろな電気を届ける
データがAPI形式に変わってシステムと自動連携されたことで予測精度が向上。それだけでなく、業務効率化という観点でも効果を生んでいます。
「以前は、夜中にメールで届いたデータをExcelツールで変換し、システムに投入するアナログな業務がありました。24時間体制で他の業務も並行して行いますので、自動連携のおかげでヒューマンエラーや遅延のリスクを排除できたことは、安定運用において非常に大きな成果だと感じています」(大場氏)
自動連携によって日々のオペレーションにゆとりが生まれたからこそ、JERAが目指す本質的な価値の追求にもつながっています。
「精度の高い気象データAPIを用いることで、必要な電気を必要なタイミングでつくる。これこそが、お客さまに安定的かつお手ごろな価格の電気をお届けするということにもつながると考えています」(大場氏)
「気象データAPI」を需給運用のインフラに組み込んだことで、現場の負担軽減と運用の最適化を高いレベルで実現しているJERA。電力市場専用の気象データAPIは、JERAの電力需給運用を支えるうえで欠かせない存在になっています。




























