導入事例

東日本旅客鉄道株式会社

マーケティング本部 マーケティング戦略ユニット 柴田信幸氏

JR東日本が「避暑旅」で夏旅促進!猛暑を旅の動機に変えるマーケティング戦略

40℃近い気温が当たり前になった日本の夏、JR東日本はウェザーニューズの広告サービスを活用して「避暑旅(ひしょたび)」のプロモーションを展開。「気温」をキーワードに、夏の厳しい暑さを避けて、涼しいエリアへの旅行を訴求する取り組みで、夏の旅需要の掘り起こしに成功しました。そんな鉄道旅の新しい楽しみ方を提案された東日本旅客鉄道株式会社 マーケティング本部の柴田信幸氏にお話を伺いました。

酷暑で旅行需要が低下、危機感から生まれた気温を味方につける新企画

「夏は暑すぎて出かけられない…」といった夏の旅行を諦めるような投稿は、SNS上でも珍しくない昨今。

「本来であれば、夏は年間を通じて旅行のハイシーズンである時期。にもかかわらず、猛暑により旅先での体調管理や熱中症リスクなどの不安要素がぬぐい切れない場面も増えています。数年前から『このままだと夏の旅行需要そのものが失われかねない』という危機感を抱くようになりました」(柴田氏)

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東日本旅客鉄道株式会社 マーケティング本部 マーケティング戦略ユニット 柴田信幸氏

一方で、東日本エリアには軽井沢はもちろん、青森県の酸ヶ湯や福島県の鷲倉など、認知度はまだそれほど高くはないものの平均気温が市街地より低い地域が数多く存在しているとのこと。

「じつは、東北・信越・関東地方には夏でも快適に過ごせる涼しい避暑地が数多くあります。その価値を再発見してもらうきっかけをつくりたい、という思いが『避暑旅』企画の原点でした」(柴田氏)

8月でも30℃を大きく下回る東京以北のエリアへ、鉄道を利用して手軽に行くことができるのはJR東日本ならではの強み。そこにウェザーニューズが提供する気象データをエビデンスとして取り入れて、実際に涼しい地域をプロモーションしていくことで、強みを最大限に発揮できる「避暑旅」という企画が誕生しました。

避暑地の涼しい気温をシンプルに訴求、専門情報は公式サイトで伝える二段構えで認知拡大

「避暑旅」の中心に据えたのは「気温」というシンプルな基準でした。猛暑報道で連日のように取り上げられる最高気温の対比として、2024年8月の実際の気温をもとにしたそれぞれの避暑地の気温(最高気温の1か月平均)を提示することで直感的に“涼しさ”を伝える戦略です。

広告の配信先としては、駅のポスターやサイネージ、トレインチャンネルなどJR系のほかにも、XやYouTube、TVer、Googleなどのデジタル広告を活用。加えて、ウェザーニューズが運用するXやYouTubeで配信したほか、利用者数No.1のお天気アプリ「ウェザーニュース」で動画のバナー広告も掲載しました。

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駅構内や電車に掲出されたポスター広告

ポスターや駅広告では「避暑地」と「気温」をシンプルに打ち出しました。興味を持った人が公式サイトにアクセスすると、ウェザーニューズオリジナルの「体感ランク」など詳しい情報を確認できる二段構えで設計したそうです。「体感ランク」は、ウェザーニューズに寄せられたユーザーからの「体感報告」と天気・気温・湿度・風速などの気象データの分析から、暑い・寒い・ちょうどよいなど人の体感を10ランクで表した指数です。

「はじめから湿度や風速といった複雑な情報を出しても伝わりにくいはず。まずはわかりやすく気温で惹きつけ、関心を持っていただいた方には深堀りできる専門的な気象情報を提供する形にしました」(柴田氏)

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新宿駅のデジタルサイネージに掲出された動画広告
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ウェザーニュースアプリに掲載された動画広告

その結果、わかりやすさが奏功し、SNSなどでも「避暑旅」というワードが自然発生的に使われるようになり、認知度の広がりを実感したとのこと。

「旅行者自身による『避暑旅をしてきました』といった投稿が増えるなど、『避暑旅』が一般化しつつあることは狙い通りの成果でした」(柴田氏)

避暑旅タイアップ特別企画をYouTubeで配信!お天気キャスターと気象予報士による専門情報で新しい層にリーチ

さらに、大きな反響を呼んだのが東北地方出身の駒木結衣キャスターによるYouTube番組でのタイアップ特別企画でした。チャンネル登録者数150万人超の気象情報番組「ウェザーニュースLiVE」で、お天気キャスターが避暑地の観光や気象情報を配信することで、東日本エリアの魅力発見に直結したとのこと。

「全12回にわたるYouTubeの特別番組は、毎回1〜4万回再生と再生回数が非常に多く、ライブ配信も5000人以上が参加。駒木キャスターのファン層が新しい接点を生み、鉄道会社だけでは届きにくい層にもリーチできました」(柴田氏)

また、お天気キャスターだけではなく、気象予報士も番組に登場することで学術的知見が加わったことも評価が高まった理由のひとつだといいます。

「視聴者の方が、暑さや涼しさの条件や仕組みをより深く理解してくださり、避暑旅の価値が深く刷り込まれる効果があったと実感しています」(柴田氏)

心地よい気候を旅の魅力の一つにして、「夏は避暑旅」を文化にしていきたい

今後も「避暑旅」には引き続き大きな可能性があると柴田氏は言います。

「鉄道会社が一方的にPRをするのではなく、気象データやお天気キャスターといった第三者の力を借りることで、新しい旅の形を築くことができました。最終的には、『夏=避暑旅』ということが文化として根づくことが理想です」(柴田氏)

旅の価値を高めるのは、景色や食だけではない。心地よい気候も大切な要素であることを私たちに気づかせてくれた今回の企画。旅の魅力に気温を加えた「避暑旅」の可能性は今後さらに広がりを見せていくようです。

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東日本旅客鉄道株式会社

事業内容

旅客鉄道事業を中心に地域社会と暮らしを支える総合サービス

特徴

東日本エリアの避暑地への鉄道旅行のプロモーションに気温のデータ活用、お天気キャスターとコラボしたプロモーション企画

規模

5001名〜

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