飛行機とヘリコプターの総合航空会社である中日本航空株式会社は、安全運航と運航管理業務の効率化を両立するために、様々な空の情報を統合したウェザーニューズ社の運航管理システムを活用しています。飛行ルート上の気象リスクの可視化やライブカメラによる現況確認、局地的かつ突発的な気象現象の把握など、現場の判断を支える仕組みはどのようになっているのでしょうか。ドクターヘリやメディカルジェットの運航における気象情報の活用方法と効果について、中日本航空株式会社 運航管理部 岸田円香氏に詳しく伺いました。
飛行ルート上の積乱雲や視程をスピード把握、一分一秒を争う出動判断の武器に
物資輸送や報道取材、航空機による各種調査や航空機整備事業など、「空に関する仕事」を幅広く手掛ける中日本航空株式会社。なかでも、航空医療の分野では、1984年に日本の事業会社として初めて救急医療専用ヘリコプターの運航をスタート。現在は全国16基地でドクターヘリの運航を担い、国内トップの実績を誇ります。
同社は安全運航の要として、ウェザーニューズ社の運航管理システム「FOSTER-Links」と機内持ち込み型動態管理システム「FOSTER-CoPilot」を導入しています。
「FOSTER-Links」は、飛行ルート上の気象情報を集約して一元的に把握でき、ライブカメラで現地の様子をリアルタイムで確認することもできます。航空機の位置情報を取得できる機内持ち込み型システム「FOSTER-CoPilot」と連携することで、飛行位置情報と気象情報の同時監視が可能になります。


「以前は、さまざまな気象情報を並行して参照し、画面を切り替えながら運航計画の判断を行うこともありました。ただ、ドクターヘリの任務は、要請から離陸まで約5分と非常に短いです。その間に『雨雲や雪雲はかかってこないか?』『視程・雲高は悪くないか?』『着陸場所周辺の天候は問題ないか?』といった要素を瞬時に判断する必要があり、複数の情報の確認作業は負荷になっていました」(岸田氏)
時間との勝負である現場では、「迷う時間は、ほんの数秒すら惜しい」といいます。迷いのない判断を支えるため、ウェザーニューズの運航管理システムは中日本航空の実務に寄り添う形で進化してきました。

現場が見える安心感。気象情報×ライブカメラ×位置情報で全国の空を多角的にモニタリング
「FOSTER-Links」と「FOSTER-CoPilot」の2つのシステムの連携は、現場の「目」を補う役割も果たしています。
「ドクターヘリは空港だけでなく、学校のグラウンドや事故現場近くの山間部など、障害物が多い場所にも着陸します。そのため、雨雲レーダーには映らない『霧』や『視程障害』の把握が極めて重要です。視程が悪いと地形や電線などの障害物が見えにくく危険なため、『山の稜線が見えるか?』『いつも見えるビルがかすんで見えていないか?』をルート上のライブカメラで確認しています」(岸田氏)

気象データとライブカメラによる視程情報を組み合わせることで、視程障害や雲底の低下なども高い精度で把握できているといいます。
「機体の飛行位置情報と最新の雨雲レーダーの重ね合わせもできるので、これから向かう方向にどれだけ雨雲が迫っているかがひと目でわかるようになりました」(岸田氏)
航路上の気象リスクの見える化で、ルート選定の精度&スピードが劇的に変化
FOSTERのシステムを導入したことで、飛行経路の策定時に必要だった『地図とレーダーを別画面で照合する』という手間もなくなったそうです。細かな緯度経度を入力する分の大幅な時間短縮につながり、取得している位置情報によって、ルートの逸脱監視にも活用できることで、安全性も強化されていると語ります。

また、毎朝行うブリーフィングも効率的に進められているといいます。
「これまでは、天気図で概況をチェックすることからはじまり、衛星画像や雨雲、上層風や火山情報など、日常の運航監視におけるさまざまな情報を複数のサイトを開いて確認していましたが、現在は『FOSTER-Links』上のひとつの画面で順番に確認できる流れが定着しました」(岸田氏)

「この『現場が見える』安心感は、報道取材や災害対応、山岳救助など、ミッションごとに異なる気象条件で飛行する私たちにとって、安全運航の強固な土台となっています」(岸田氏)
低高度のドクターヘリから高高度のジェット機まで、安全な空を一元管理で実現する
活用の幅はヘリコプターに留まりません。「FOSTER-Links」では、地図上で飛行ルート、飛行予定時刻、飛行高度を入力すると、ルート上空の大気構造を鉛直方向で予想した断面図も表示することができます。飛行予定時刻に合わせた風向、風速、気温、湿域などを、飛行高度に重ね合わせて可視化することもできるため、固定翼機の運航判断にも用いられてます。
特に患者搬送や臓器搬送も担うメディカルジェット(固定翼機)の運航では、高度な鉛直断面図やポイントサマリーが重宝されています。
「高高度を飛ぶジェット機は、着氷や上空の風の把握のほか、気温によってエンジンのパフォーマンスが変わるため、詳細な気温データに基づく厳密な計算が必要です。また、北海道での患者搬送事業(メディカルウイング)など、冬場の厳しい環境下では、雪の予測精度が運航の可否を分ける生命線となります」(岸田氏)

中日本航空のキャッチフレーズは“ALL@SKY ―ソラノコト全部―”。これは、エアラインをのぞく「空に関する仕事」を多種多様に行っていることからきているとのこと。
「低高度から高高度まで、あらゆる『空の仕事』において、最適な判断が最速でできるよう、気象情報の活用度を上げていきたいです。そのために社内での勉強会も重ねており、これからも飛行高度やミッションに合わせたカスタマイズをさらに進めていくことを目指します」(岸田氏)
中日本航空は、これからもあらゆる飛行機・ヘリコプターを取り扱う総合航空会社として、最新の気象データとともに、安全運航の未来を力強く描き続けていきます。






















