海事都市である大分県佐伯市で30年以上にわたり造船を続けている佐伯重工業株式会社では気象IoTセンサー「ソラテナPro」を導入し、天候を数値で把握、危険予測を遠隔共有しています。海辺の造船所における気象データ活用法について、佐伯重工業株式会社 船渠室 高島享彦氏と柴田大地氏にお聞きしました。
決め手は導入コストと手軽さとサービスの利便性
佐伯重工業株式会社の造船所は太平洋に面した海沿いに位置し、毎日「風」と向き合っています。
「工事期間中も進水式後も、お客様の大切な船舶を安全に岸壁に係留しておくためには、風向と風速の実況と予測を正確に把握することが欠かせません。
台風接近時などで風が強いようなら、船を沖に出して逃すなど対応したいので、風向風速の「実況」と「予測」の両方を見たいと思っていました。これまでも風向風速計はありましたが、受信機を近くに置いておく必要があり、ローカルの環境でしか見ることができませんでした」(柴田氏)
また、造船の基本となる溶接作業の際も気象の変化ひとつで作業の進行や、現場で働く作業員の安全に影響を及ぼすといいます。
「夏場の炎天下での溶接作業は体力を奪い、冬場は冷たい海風が吹きつけます。自然環境に左右される現場だからこそ、気象に対する高い意識が求められる仕事だといえます」(高島氏)
さらに、これまでの現場では、ベテランの作業員の勘や経験に頼って気象リスクを判断していたものの、それも限界を迎えていたとのこと。
「高齢化が進み、若手への引継ぎや明文化された判断基準が急務に。無料の天気予報より格段に精度の高い気象データと、誰でも判断できるツールの必要性が高まっていました」(高島氏)
海沿いの作業現場の「今の風」が見えるからこそ、的確な判断が可能に
「ソラテナPro」導入後は、現場に大きな変化が生まれたと話します。作業現場に設置した風速や風向、温度や湿度といった「ソラテナPro」から1分ごとに送られてくる観測データを事務所内のPCと大型モニターに常時表示。現場作業員は「風速10m/sで作業確認」「風速15m/sで作業中断」といった社内ルールに従い、的確な判断を行っています。
「リアルタイムな気象状況を関係者全員が視覚的に把握できるようになったことと、明確な数値による判断が浸透したことは、作業時のリスクの軽減につながっているのではないでしょうか」(柴田氏)
ほかにも、「ソラテナPro」の通知機能も活用し、あらかじめ設定した風速に達するとスマホアプリやメールで管理者にアラートが届く仕組みも運用しているとのこと。現場を離れていても即座に情報共有が可能になりました。
「以前は手書きで記録していた風速データも導入後は自動的に蓄積されるため、万が一の事象が発生したときには記録を確認して報告書を作成できるようになりました」(高島氏)
「個人の判断」から「現場全体の合意」へ意思決定の基準が変化
「最大の変化は、天候の判断が『人によってバラつきがあるもの』から『全員が納得できる数字』へとシフトしたこと」だと話します。風の強さや暑さの警戒レベルなど、これまで個人の体感に頼っていた判断がデジタルの力で客観的になったのは大きな変化だといえます。
「気象変化の予測精度が向上し、それに基づく早期の対応も可能になりました」(柴田氏)
また、コスト面でも大きなメリットを感じられたとのこと。
「数百万円の高額な観測装置を設置するという選択肢もあった一方、『ソラテナPro』は大がかりな設置工事が要らないレンタルタイプ。費用も大幅に抑えることができました」(高島氏)
熱中症リスクへの「先読み対策」にも注力していく
今後は、熱中症対策としての暑さ指数の本格運用を積極的に取り組んでいきたいと意気込みます。
「夏場の溶接作業は想像以上に過酷で、とくに経験値の浅い新人や若手は体調の異変に気づくのが遅れるケースも少なくありません。暑さ指数のWBGT値に応じて休憩のタイミングを通知するなど、作業中の安全管理の強化を目指していく考えです」(柴田氏)
造船の作業現場で、安全と効率を両立させるための武器として活用している「ソラテナPro」。経験則だけでは拾いきれなかった変化を数字でとらえ、作業中止や判断のタイミングを共有できるようになったことは、船の係留や作業現場の体制を一層強化することにつながったといいます。佐伯重工業株式会社は、「誰もが同じ基準で、安全を判断できる」という新しいスタンダードを実現しています。






















