代理店を介さず直接自動車保険を販売する「ダイレクト自動車保険」において、20年以上連続で業界シェアNo.1を堅持するソニー損害保険株式会社。同社は近年激甚化する雹(ひょう)による車両被害への対策として、ウェザーニューズの「ひょうリスク予測API」を導入しています。
本データを活用して、自動車保険契約者に対して事前にメールで注意喚起をする「降雹アラートサービス」が注目を集めています。“事故後の対応”だけでなく“事故を未然に防ぐ保険”へ、気象データを活用した新しい保険サービスの可能性について、ソニー損害保険株式会社でロスプリベンション(損害防止・軽減活動)を担当する安中聡志氏と村田彩香氏にお話を伺いました。
激甚化するひょう被害と、逼迫する現場。起きてからの対応はもう限界
近年、気候変動の影響によって局地的なゲリラ雷雨が発生しやすくなり、全国各地で降ひょうによる自動車の損傷被害が増加しています。ひょうによる被害は、保険会社にとっても契約者にとっても非常に深刻な課題となっていました。
「ひょうは短時間かつ局地的に発生するため、被害が集中しやすい特徴があります。お客様にとっては、修理費用の負担や翌年の保険料アップという金銭的・心理的負担が大きく、当社側では、地域の修理工場や当社の事故対応オペレーションが一気に逼迫してしまうという課題を抱えていました。同じエリアで大量の被害が起きるため、どうしても対応が追いつかなかったり、修理完了まで時間がかかってしまうことがありました」(安中氏)
プロジェクトメンバーの安中聡志氏と村田彩香氏
実際に2023年7月には群馬県、2024年4月には兵庫県でも、降ひょうによって多くの自動車保険契約者の車両が損傷し、事故対応が一度に集中するケースが発生。従来のような事後対応のアプローチだけでは限界を感じ、2025年にウェザーニューズの気象データ「ひょうリスク予測API」を活用した新サービスを開始しました。


「自然災害による損害は規模が大きく、発生後の対応だけでは限界を感じていたのも事実。“事故後対応の顧客満足度の高さ”という従来のサービスは維持しつつ、『そもそも損害そのものを減らすことはできないだろうか』という発想から今回の取り組みはスタートしました」(村田氏)
ひょうの予測データを活用して前日に注意喚起、回避できる十分な時間の確保へ
ソニー損保がはじめた取り組みは、降ひょうの可能性がある市区町村に居住する自動車保険の契約者に対し、前日夜や当日朝にメールで注意喚起を行うアラートサービスです。基本的には前日夜までにお送りしますが、前日夜の段階では降ひょうリスクが低く、当日朝の最新予測でリスクが高まった場合には、当日朝にアラートを配信します。

通知のトリガーとなる「ひょうリスク予測API」は、1㎞メッシュの高解像度で36時間先まで1時間ごとの降ひょうリスクを予測し、APIでデータを提供するサービスです。「リスクが低い」「可能性あり」「注意」「警戒」の4段階で判定します。お天気アプリ「ウェザーニュース」のユーザーから寄せられるひょう報告をリアルタイムに予測モデルに反映することで、従来よりも高い精度での予測を実現しています。

「ポイントは、ひょうが降る“直前”ではなく、“前日夜”や“当日朝”に通知するという点です。他社のアラートの多くは、レーダーをもとにした直前の通知ですが、直前に言われても車を避難させる時間がなく防ぎようがありません。私たちは契約者のみなさまに、降ひょう対策を講じることができる十分な時間をご提供したいと考えました。36時間先まで予測できるウェザーニューズだからこそ、ソニー損保が理想とする前日夜の通知を実現できました」(安中氏)

また、通知メールではリスク情報だけでなく、具体的な回避行動の例もあわせて案内しています。
「一例として、『屋内駐車場に車を避難する』『車体全体を厚めの毛布で覆う』『フロントガラスを段ボールなどで覆う』といった具体的な回避行動を提案するようにしています」(村田氏)

2026年5月に「ウェザーニュース」アプリのユーザーに実施したアンケート調査では、“何をすればいいかわからない”という方が半数に達しています。

そんななかで、これらの施策は契約者に対して、補償内容から得られる物理的な安心感だけでなく、「事故が起こる前から連絡をもらえる保険に入っていてよかった」といった心理的な安心感をお届けすることにもつながっているといいます。
想定を超えるドライバーが回避行動を実行。7割のお客様が良い情報と高評価
「降雹アラートサービス」の配信対象となる契約者は、全国で約150万人にものぼります(メールの配信停止設定をされていない方、2026年6月時点)。ソニー損保が実際の効果を検証するため、約1万人の契約者を対象にアンケート調査を実施したところ、その結果に驚いたといいます。
「事前の想定を遥かに上回るドライバーが、通知を受けて実際に『毛布をかける』『屋根のある場所に移動する』などの回避行動をとっていたことがわかりました」(安中氏)
結果、7割以上のお客様から「とても良い」「良い」という高評価が寄せられました。残りの大半も「自分の地域には降らなかったが、通知自体はありがたい」という回答で、事前の備えにつながるサービスとして評価されていることがわかりました。
「保険会社から事前に注意喚起が届くことがドライバーの安心感に直結し、『事前に守ってくれる保険会社』という新しい価値の創出が顧客満足度の向上につながったのではないでしょうか」(安中氏)
さらに、この取り組みは「契約者」だけでなく、「保険会社」や「修理工場」にとっても利点をもたらす仕組みになっています。
<メリット>
○ 契約者:愛車が傷つかず、修理費用の負担や翌年の保険料アップを防ぐことができる
○ ソニー損保:問い合わせや事故受付の集中、保険金の支払いを抑えられる
○ 修理工場:突発的な修理の注文ラッシュが緩和される
「これまでは、大規模なひょう被害が起きると『事故受付』だけでなく、修理費用をお支払いする『保険金支払』や被害状況を調査する『車両鑑定人の手配』など、あらゆる業務が一気に逼迫していました。事前のアラートによって被害を回避できる車両が増えていけば、事故件数そのものを減らすことができます。結果として事故対応の集中が避けられ、お客様により丁寧で迅速な対応が可能になります。
また、ひょうによる車両被害は、ボディの広範囲に及ぶと修理費用が高額になりやすく、最悪の場合は全損になるケースも珍しくありません。被害を未然に防ぐことは、お客様の保険料の上昇を防ぐだけでなく、私たちがお支払いする保険金も抑えられるため、保険金を抑えることによる経営基盤の安定への貢献や、サービス品質の向上に直結しています」(村田氏)
ひょうのリスク予測で社員も事前にスタンバイ。みんなで備えるこれからの保険
ソニー損保では、気象データの活用を単なるサービスのひとつではなく、保険会社の役割そのものを広げる可能性を持つ取り組みだと考えているといいます。
「これまでの『もしものときに備えるための保険』が、テクノロジーの進化と気象データの活用によって、今や『事故や被害を事前に予測し、未然に防ぐところから支える保険』へと役割を広げることができています。社内でも、事前にリスクを予測できるようになったことで、関連する部門が前もって体制を整えるなども可能になりました。お客様からも社内からも非常に手応えのあるフィードバックを得られたことで、この方向性が間違っていないと感じています」(村田氏)
お客様の安全なカーライフを守ることと、損害保険会社としての社会的責任を果たすこと。この両方を実現し、ソニー損保が掲げる“価値ある「違い」で安心と感動を”というビジョンに寄り添う気象データ活用モデルは、保険の未来を感じる新しい一手です。























