Event
"Weather & Climate Forecast Conference (WCFC) 2025" 開催報告
2025年12月16日(火) 13:00~17:30
東京国際フォーラム D5ホール (東京都千代田区丸の内3丁目5番1号)

開催報告
AIとグローバルな連携による気象・気候予測の新時代の開拓
2025年12月16日、WNI気象文化創造センター主催による初のWeather & Climate Forecast Conference(WCFC)2025が東京国際フォーラムで開催されました。「AIが拓く、気象業界の新たな価値」をテーマに掲げたこの会議では、学界・産業界・気象水文機関のリーダーが一堂に会し、アジア太平洋地域における気象インフラの近代化と予測技術の進展について議論しました。本会議の究極の目標は、実践的な取り組みを通じて災害リスク軽減と社会的レジリエンスを優先する新たな「気象文化」を育むことにあります。

1. パラダイムシフト:AIを活用した気象予測
本会議では、業界における画期的な転換が強調されました。人工知能(機械学習)は、物理ベースの数値天気予報(NWP)モデルの「ゴールドスタンダード」を今や凌駕しています。
• 劇的な速度と精度の向上: Google DeepMindが発表した最新モデル「機能的生成ネットワーク(FGN)」は、スーパーコンピューターで数時間かかっていた計算時間を、単一GPUでわずか数分に短縮。さらにAIは、従来モデルが苦戦してきた熱帯低気圧の強度・構造予測において、最先端の精度を達成しました。
• 1,000メンバー・アンサンブルの威力: AIの低計算コストを活用し、研究者らは1,000メンバー・アンサンブル予測の実装に成功。これにより予報官はわずか1%の確率でも異常気象を検知可能となり、従来評価が困難だった稀だが壊滅的な災害の早期兆候を提供します。

• 台風予測の画期的な進歩 - 精密予測の新時代: 株式会社ウェザーニューズ(WNI)のグローバルストームセンターは、Google DeepMindのFNV3モデルが2025年シーズンにおいて、従来の基準と比較して進路誤差を40%、強度誤差を20%低減させたことを実証しました。2025年8月以降、WNIがECMWFのAIFSモデルを用いて提供する公式台風進路予報は、JTWCやJMAなどの主要国際機関の予報よりも約20%高い精度を維持。さらにAIモデルは台風発生初期段階から驚異的な安定性を示し、予報官が迅速かつ的確な意思決定を行うために必要な信頼性の高い情報を提供しています。

株式会社ウェザーニューズ(WNI)グローバルストームセンター 今野 良洋 様
2. 各国気象水文機関(NMHS)の視点
パネルディスカッションでは、インドネシア(BMKG)、フィリピン(PAGASA)、タイ(TMD)、ベトナム(VNMHA) の気象水文機関(NMHS)代表者が登壇し、熱帯地域におけるAI統合の重大な課題と高い期待について共有しました。
• 激化する災害への対応: 東南アジア・南アジア諸国は気候変動の最前線にあり、より頻繁かつ激しい台風、鉄砲水、局地的な豪雨に見舞われています。人命と財産を守るため、「影響ベースの予報」による早期警報システム(EWS)の強化が最優先課題です。
• 数値予報の課題への対応: 従来の物理ベースの数値予報モデルは、複雑な熱帯対流や0~3時間の「ナウキャスティング」において課題を抱えることが多い。関係者はAIを物理ベースモデルの代替ではなく、予報の一貫性を向上させ、気象データと実用的なガイダンスの間のギャップを埋める「変革的な層」と位置付けています。
• グローバル連携の必要性: これらのAIソリューション導入には、GPUベースのハイパフォーマンスコンピューティングへの多額の投資と、専門的なAIエンジニアリングスキルにおける能力開発が不可欠です。警報の信頼性を確保するため、必要なクラウドスケーラビリティと「説明可能なAI(XAI)」フレームワークを提供するには、大手テック企業や国際パートナーとの連携が強く求められています。

3. 実世界での実装:意思決定支援エージェントとしてのAI
本会議では、AIが単なる「予測ツール」から、人間の意思決定を導く「知能エージェント」へと進化している様子も紹介されました。
• AI気象エージェント: WNIは大規模言語モデル(LLM)を活用した「気象(お天気)エージェント」を発表。1億件以上のユーザー報告から得られた20年間の「人間が感知した」データと高解像度分析データを統合することで、AIは「傘を持っていこうか?」「サプライチェーンにどのような影響があるか?」といった質問に対し、自然言語でアドバイスを提供できます。
• ビジネス価値の創出:「気象インテリジェンス」を意思決定シグナルとして標準化することで、気象データを在庫管理、需要予測、リスク管理、業務計画に体系的に統合可能にします。この統合により、気象情報は単なる予報から、災害軽減などの経済的価値や社会的便益を直接生み出す原動力へと変貌します。

4. 未来像:共創と観測の役割
東京大学(ClimCORE)は「観測こそが現実の大気とデジタル世界を繋ぐ唯一のツールである」と強調し、堅牢なAIモデルを訓練する基盤として、高品質な観測ネットワークと「再解析」データの維持が継続的に重要であることを訴えました。
会議はAI時代における「役割分担」のビジョンで締めくくられました:
• Big Tech.企業と国際機関: 巨大で高精度のグローバルAIモデルを開発する。
• 国家気象水文機関(NMHS)と民間セクター: 地域の地形や特定の社会的ニーズに合わせた、地域別・用途特化型のAIモデルをカスタマイズする。

参加のお願い
WCFC 2025では、新たなAI技術を気象水文機関(NMHS)や社会のニーズに整合させることで、早期警報システムを強化し人命を救えるという強い確信が強調されました。
次回会議では、計算資源の制約、高解像度・地域特化型・用途特化型モデルの必要性、効果的なAI活用のための能力開発、各国の気象災害に適したAI技術の導入など、議論の中で特定された主要課題に取り組みます。アジアの気象当局、AIイノベーター、学術機関、Google DeepMindや株式会社ウェザーニューズなどの民間企業による解決志向の対話が期待され、国際社会全体での災害対策と対応の進展を目指します。

"基調講演" 株式会社ウェザーニューズ テクニカルディレクター 西 祐一郎 様 |
"Spatio-temporal Characteristics of Summer Rainfall in Upper Northeastern Thailand under ENSO Influence: Evidence from Radar Data and Numerical Modeling" チュラロンコン大学 Ekkamol Vannametee 様 |
"Toward Applying AI for Rainfall Estimation and Prediction in Vietnam" ハノイ科学技術大学 Ngo Duc Thanh 様 |
"The role of the academe in meteorological research in the Philippines" フィリピン大学 Gerry Bagtasa 様 |
"Challenges and opportunities of Climate Adaptation in Thailand" タイ気候変動環境局 Teerapong Laopongpith 様 |
『AI 気象モデルのアジア地域への応用と課題』 株式会社ウェザーニューズ WNI Forecast Center 坂本 晃平 様 |
『AI 気象モデルのアジア地域への応用と課題』 株式会社ウェザーニューズ WNI Forecast Center 藤野 純平 様 |
講演動画
※一部のセッションは、講演者の都合によりアーカイブ配信の対象外となっております。
あらかじめご了承ください。
講演資料
講演資料は下記のリンクより閲覧可能です。
https://link.extcs.wni.com/zBrwgywy45
※一部の講演資料は、講演者の都合により非公開となります。あらかじめご了承ください。




















