導入事例

アルピコ交通株式会社

鉄道事業部 隠居哲矢氏

長野県の安全な鉄道運行を支える気象サービス、運転見合わせや再開判断のスピード向上に寄与

長野県の松本市を走る上高地線や主要都市〜信州を結ぶ高速バスなどを運行するアルピコ交通株式会社。同社の鉄道部門は、鉄道の運転見合わせや再開の判断に気象情報を活用するために、「ウェザーニュースfor business」を導入。地方の生活や経済活動を支える重要なインフラとして、落雷や雨氷(うひょう)、地震といった多様で厳しい気象リスクに日々立ち向かっています。

今回は、地方の鉄道の安全運行や効率的な判断にどのように役立てられているのか、その具体的な実例について、アルピコ交通株式会社 鉄道事業部 隠居哲矢氏にお話を伺いました。

橋梁被災で10か月の長期運休を経験し、感覚的な判断からの脱却へ

アルピコ交通の鉄道部門が気象データに基づくリスク管理の必要性を痛感したのは、2021年8月、松本市を流れる一級河川の田川の増水によって、上高地線の橋梁が被災したことでした。この影響で上高地線は約10ヵ月もの長期運休を余儀なくされました。

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2021年8月の河川増水で橋脚が傾斜した田川橋梁
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上高地線の西松本駅~渚駅で被害が発生した

上高地線は、松本市西部地域を中心とする住民にとって欠かせない移動手段であり、地域の生活と経済活動を支える重要な鉄路です。一部区間でバス代行輸送に切り替えるなどの施策を試みたものの、地域に与えた影響と会社への損害は甚大なものとなりました。

「これまでは『雨が降ってもしばらくしたらやむだろう』という感覚をもとに判断しており、気象リスクへの備えは十分とはいえませんでした。しかし、田川の増水による長期運休を経験し、『これからは気象を“見える化”していく必要がある』という危機感が社内に芽生えました」(隠居氏)

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アルピコ交通株式会社 鉄道事業部 隠居哲矢氏

さらに、近年増加している「局地的に激しい雨が降る」といった、従来のパターンとは異なる気象現象への対応も急務となりました。こうした背景から、高精度でピンポイントな気象情報を求めて「ウェザーニュースfor business」の導入にいたりました。

雷雨・雨氷・地震による運転見合わせ・再開をデータに基づいて判断、運行オペレーションが効率化

「ウェザーニュースfor business」の情報は列車の運行を管理する「運転指令」の指令員が日常的に活用しています。

「『定時かつ安全運行』という鉄道事業の特性上、運転指令所では迅速かつ正確な状況把握が必要不可欠です。このサービスを使うことで、すべての気象情報を1か所で入手可能になっただけでなく、気象リスクの予兆に早く気がついて、判断できるようになりました。これにより、『いつ作業を中止し、いつ再開するか』『どの区間を優先的に点検するか』といった段取りも飛躍的にしやすくなりました」(隠居氏)

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路線に接近する雨雲を確認する運転指令員

実際に、落雷や雨氷の気象トラブルが発生した現場で、安全確保と早期回復に役立てられた例も伺いました。

2024年8月に落雷で運休が発生したものの、雨や雷の予報をもとに作業員の安全を確保しつつ、迅速に復旧作業に着手。機械の損傷コストを低減することにつながったそうです。

2025年3月には雨氷によるトラブルが発生し、気温の予報を活用して運行ダイヤを早期回復。気温データと地点登録機能を確認し、いつ解氷するかを見極めながら運転再開のタイミングを調整。部分的に凍結する路線特性をふまえ、再凍結リスクを避けた運行計画を立案できました。

さらに、翌月に地震が発生し、沿線地震計による震度分布のデータを活用して輸送再開を迅速化。これまで全線に一律に速度規制をしていた対応を、区間ごとに分けて再開できたことで、対応が早まっただけでなく、乗客の安心感向上にもつながったといいます。

判断基準の見える化&情報の一元化で、復旧作業や事務の業務スピードも格段に向上

「ウェザーニュース for business」の導入は、安全性の向上だけでなく、業務効率の面でも大きな変化をもたらしました。

「導入後は判断基準が“見える化”され、格段に効率化が進みました。たとえば運休後の復旧作業開始のタイミングも、雨雲レーダーや落雷リスクモニタリングの情報を活用すれば『もう雨雲が抜けて落雷の心配もないので修理をはじめよう」という判断がしやすくなります」(隠居氏)

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スマホでも気象情報を確認できる

さらに、そうした判断の根拠を資料として残せる点も大きなメリットだといいます。

「以前は、複数の情報源をたどるための時間と手間がかかっていました。今は必要な情報を一元的に得られることができるため、関係各所への報告なども含め、業務のスピード感が格段に増しました」(隠居氏)

今後は屋外作業員の安全対策に活用拡大、熱中症対策や作業計画の策定にも活かしたい

隠居氏は気象情報の活用の場を、屋外での設備点検や線路巡回を担う社員の安全対策に広げていくことも考えています。

「熱中症リスクの高まりを考慮し、暑さ指数(熱中症リスク)などを参考にしながら『今日は無理して作業の予定を入れない』『3日先までの予測をもとに作業計画を変更する』といった臨機応変な段取りの組み方も視野に入れています」(隠居氏)

また、気象状況を見える化し、より正しく把握するため、将来的には観測機器の設置も視野に入れているといいます。

「より多くのデータを得て、現場で働く作業員や関係部門への情報共有を徹底し、安全と効率の両立を目指す体制づくりを進めていきたいです」(隠居氏)

気象リスクと真摯に向き合うアルピコ交通の取り組みは、地域の公共交通のより安全な運行と迅速な対応の両立を実現させていくことでしょう。

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アルピコ交通は高速バスも運行 長野県と関西・関東などを結ぶ20路線以上を展開
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松本城や山岳リゾートなど 信州への旅を日々安全運行でつないでいる

アルピコ交通株式会社

事業内容

鉄道やバスを中心とする長野県の地域交通など

特徴

鉄道の安全運行に気象情報を活用

規模

1001〜5000名

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