EBILAB(エビラボ)では、飲食店・小売店向けデータ分析ツール「TOUCH POINT BI」に、ウェザーニューズ社の気象データ提供・分析サービス「ウェザーテック(WxTech®)」を導入しています。
伊勢神宮参道で100年余り続く「ゑびや大食堂」の売り上げを5倍に成長させたという「TOUCH POINT BI」に気象データはどのように活用されているのでしょうか。「ウェザーテック」導入の背景も含めて、EBILABエンジニアの川満歩貴氏と広報の堀口千春氏に伺いました。
独自開発したAIデータ解析システムで店舗経営を効率化、売り上げが5倍に
EBILABは、三重県伊勢市の伊勢神宮参道の「おはらい町」にある老舗食堂「ゑびや大食堂」のシステム部門“ゑびやのらぼ”としてスタートし、2018年に分社化。主に、飲食店向けクラウドサービスの開発・販売・サポート業務を担っています。
独自開発した「TOUCH POINT BI」は、AIを取り入れたデータ解析システムです。POSや気象・入店者数・観光客数・アンケートなどの様々なデータを自動で収集分析し、データに基づく店舗運営を手軽に行えます。
「『ゑびや大食堂』の5代目代表・小田島春樹は、それまで紙にそろばんとアナログだった店舗運営に、『TOUCH POINT BI』などのデジタル技術を積極的に導入しました。ITツールを使うことで、事務作業の時間を短縮し、従業員一人ひとりの動ける範囲を広げ、生産性を上げようとしたのです。
その結果、2012年〜2018年まで従業員数はほぼ変わらないにも関わらず売り上げは5倍に成長。食堂に加え、土産店『ゑびや商店』や屋台『あわび串屋台』といった別業種もオープンさせるなどの成果をあげました」(堀口氏)
「ゑびや大食堂」を成功に導いたソリューションを他の飲食店・小売店にもパッケージ化して販売しています。
「『TOUCH POINT BI』を導入して売り上げ管理などをシステム化することで、従業員は目の前のお客様に集中しやすくなります。導入は地域の飲食店や小売店さんからはじまり、現在は病院や薬局、商業施設など様々な業種・業態に広がって、今では全国で約200社にご利用いただいています」(川満氏)

「TOUCH POINT BI」を支える重要なデータが気象だといいます。
「例えば、『ゑびや大食堂』の実績をみても、気象がどれだけ売上を左右するのかがよくわかります。立地が観光地ということもあって、雨の日は通行量が激減するため、売り上げにも大きな相関関係が見られました。
客数や売り上げ、利益を左右する気象データは、店舗経営に関するデータの中でも重要な変数のひとつなのです」(川満氏)

気象データを駆使した店舗分析や来客予測システムで経営を効率化
「TOUCH POINT BI」で収集されたデータは、「来客予測AI」という来客予測システムにも応用され、店舗運営のさらなる効率化を実現しています。ウェザーテックの気象データは、「TOUCH POINT BI」の売上データ分析や、「来客予測AI」などに組み込まれています。
「取り込む気象データによって、私たちのサービスの精度が大きく変わるので、これまでも色々なデータを試してきました。はじめは気象庁や他の気象情報会社のデータを使っていたのですが、より確かなデータを求めて『ウェザーテック』に切り替えました。
評価のポイントとなったのは、主に2つあります。まずは、予測精度の高さです。『TOUCH POINT BI』の精度にも直結する最も重要な要素です。次に、データの細かさです。1kmメッシュの細かさで1時間単位の予測データを活用できます。気象データの影響は、その店舗の立地、地域性によって様々なので、細かいピンポイントの情報が求められるのです。
その他にも、APIで提供され、リアルタイムでシステムに取り込めるという手軽さにも、メリットを感じました」(川満氏)

来客予測AIは的中率95.7%、廃棄ロスを72.8%削減
来客予測は気象データだけでなく、様々なデータが使われています。
「気象はもちろん、POS、観光客数、前年比など、様々なデータから客数を予測しています。
もちろん、駅から遠い店舗ではより気象データの影響が大きくなるなど、各データが与える影響は店舗によって異なるので、予測と検証を繰り返すことで、各店舗に最適化したデータを抽出し、精度を上げてきました。『ゑびや大食堂』では、予測的中率が95.7%(※)です」(川満氏) ※「ゑびや大食堂」2019年 年間平均予測率
気象データの活用により非常に高い効果を上げたもうひとつの例が、廃棄率です。
「実は、『来客予測AI』の開発は、来客数の予測ができれば食材の発注を最適化できるのでは、ということからスタートしました。さらに、現場の店舗責任者が、仕入れ量を計算するための『メニュー予測』というサービスもあります」(川満氏)
「ゑびや大食堂」でも、来客予測やメニュー予測を使って仕入れを調整しています。
「過大な発注の防止や、新鮮な食材の提供など、大きな効果が見られました。廃棄ロスは2016年からの3年間で72.8%も削減できたのです」(堀口氏)

さらに、集客効果や人員配置でも成果が見られたといいます。
「天気によってメニューの需要が大きく変わるので、晴れなら『てこねずし』、雨なら肉料理など、天気に合わせた人気メニューを店頭の看板に飾るなどの方策で、集客力アップにつなげました。
また、アルバイトのシフト調整や、『ゑびや大食堂』『ゑびや商店』『あわび串屋台』といった異なる業種間での従業員の配置転換など、気象に合わせて人員配置の最適化も行っています」(堀口氏)

気象を取り入れたデータ解析の力で、勘に頼らない店舗経営を実現
新たにスタートした「混雑予報AI」も好評です。
「コロナ禍での3密対策をきっかけに始めたサービスで、どの時間帯に混雑するかを表示できます。密を回避することができるので、店舗を利用するお客様の安心感につながっています」(川満氏)
将来的には、現在「TOUCH POINT BI」で使っている“晴れ““雨”などのカテゴリ値と気温に加え、さらに細かい天気データを取り入れた予測・分析を行いたいという希望もあるといいます。
「ゴルフ場や病院、商業施設など飲食店以外の業種・業態のお客様も増えており、気圧や風速など、より幅広いデータを取り入れて、予測に使ったときにどうなるかを検証していきたいと思っています。例えばゴルフ場では、風速のデータが欠かせないなどが考えられるかもしれません。
また、現状は私たちが提供するのは、あくまで“見える化”されたデータのみですが、中にはデータをどう活かしたら良いかわからない、というお客様もいます。現状の分析・可視化に加えて、アクションまで提案するweb完結の仕組みができないかなども含め、課題解決につながるサポートの可能性を考えていきたいです」(川満氏)
気象データを含めたデジタル技術を駆使して、勘に頼らない店舗経営をサポートするEBILABの挑戦は続きます。