導入事例

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会

危機管理局 田中英人氏

万博来場者の安全を守り抜く184日間の危機管理、落雷と熱中症の最新情報で万全に備える

ウェザーニューズは2025年4月から10月に大阪で開催された「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」に運営参加サプライヤーとして協賛しました。

延べ約2,900万人の来場者の安全確保は、博覧会協会危機管理局にとって最大の使命でした。とりわけ落雷や熱中症などの気象リスクへの備えは重要課題であることから、法人向け気象情報「ウェザーニュース for business」が導入されました。

今回は、会場全体の安全を守る「危機管理センター」で気象監視を担当された、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会の田中英人氏に、万博運営における気象情報の活用方法や当時の状況などを伺いました。

気象監視で来場者の安全確保へ、屋外イベント運営支援の実績と高度な技術力が決め手に

危機管理センターは、会場全体の警備・消防・防災・医療救護を統括する司令塔としての役割を担っていました。

会場内で事件事故や傷病者が発生した際には、警備隊やパビリオンなどからの情報を集約。事件事故は状況に応じて警察隊や関係局と連携し、傷病者は医師の指示のもと警備隊や救護隊、救急車が出動するなど、迅速な対応が行われました。このような来場者の安全確保のため、気象監視は重要な業務の一つでした。

万博会場は屋外エリアが広く、気象リスクの中でも落雷と熱中症対策が大きなテーマでした。屋外イベントでは、落雷による人身事故のリスクがあるため、雷雲の情報収集と迅速な避難判断が不可欠です。

田中氏は導入の決め手について、「ウェザーニューズ社は屋外イベント運営支援の実績が豊富で、雷対応オペレーションをどのように組み立てるか、具体的な提案をいただけたことが大きかったです。実際に本社を訪問した際にも、ユーザー視点のサービス開発と、最新技術を駆使した監視体制に感銘を受けました」と振り返ります。

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(公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 危機管理局 田中英人氏)

屋外エリアへの落雷に備えて、「落雷リスクモニタリング」で迅速な退避誘導を実現

積乱雲が発達しやすい7〜9月を中心に、危機管理センターのモニターには「ウェザーニュース for business」の「落雷リスクモニタリング」が常時表示されていました。危機管理センターの協会職員全員がアプリでも随時状況を確認できる体制を整えることで、いざという時に迅速に対応できるよう備えていたといいます。この体制は、落雷に関する緊急放送や来場者の退避誘導の指示などに効果を発揮したとのこと。

「屋外エリアのなかでも、特に大屋根リング上への落雷が心配でした。会場内で最も高い位置にあり、来場者の退避誘導にも時間がかかります。他社の気象情報も見ながら、落雷リスクが高まった際には、直ちに緊急放送を実施し、誘導を担う警備隊へ来場者の退避誘導を指示するとともに、関係者に雷対応のオペレーションを実施するよう連絡しました」(田中氏)

また、「ウェザーニューズ for business」は情報共有の面でも有効でした。危機管理センター内の警備隊指揮者にも監視画面を共有しておくことで、大屋根リング上の警備隊から遠方で視認された雷光に関する問い合わせがあった際にも、万博会場より十分に遠方であることを根拠に基づいて説明をすることができたといいます。

さらに、コンテンツの見やすさや操作性においても、現場で高く評価されていたとのこと。

「マップ上に監視エリアの円が描かれて、会場から何km以内で落雷が発生しているか把握しやすく、雷雲の動きや発雷エリアの予報を確認できるのが便利です。これは、今後の落雷リスクの見通しを立てる上で有効だと他の職員からも好評でした」(田中氏)

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(「落雷リスクモニタリング」では監視エリアの円の大きさや形状を自由に設定できる)

真夏は熱中症情報の予報も確認して、熱中症リスクをしっかり把握

落雷と並んで開幕前から懸念されていたのが、夏の熱中症リスクでした。危機管理センターでは複数の暑さ指数のデータを収集しており、「ウェザーニュース for business」の熱中症情報も活用し、現場スタッフへの注意喚起や来場者への対応準備を行っていました。特に暑さが厳しくなると予想される日は、予報をもとにあらかじめ態勢を整えるなど、現場での安全確保につなげられたといいます。

「熱中症の危険性を事前に把握できることで、当日の救護対応や広報アナウンスなどの準備がしやすくなりました。落雷リスクモニタリングと同じ画面で、会場のピンポイントな熱中症情報を確認できるので使いやすかったです。雷と同様に、事前に“備える”ための情報として有効でした」(田中氏)

信頼性の高い多様な気象情報とチーム連携で、万博の安定運営を実現

当初、雷対策をメインに活用する想定で導入された「ウェザーニュース for business」ですが、開催期間を通して熱中症をはじめ、台風や大雨対策など多岐にわたる防災に活用されました。

「会場のピンポイントな天気予報に加えて、雨雲レーダーや台風の進路予測などの面的な情報を各職員で同時に確認できる点は、状況認識を行う上で有効でした。 様々な気象情報のコンテンツを重ね合わせてマップで確認することができ、運営面で非常に助かったと感じています。」(田中氏)

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(各国の気象機関や当社独自の台風進路予測から最悪の事態を想定 台風〜会場までの距離や、暴風・強風域に入る時間帯も把握できる)

こうして、184日間にわたって開催された万博は、雷や台風、猛暑など様々な気象リスクに晒されながらも安定運営を実現し、気象に関する大きなトラブルなく無事に閉幕しました。

危機管理局は、最新の気象情報に基づく迅速な判断と職員間のチーム連携を徹底。こうした努力と高度な気象情報を用いた危機管理体制によって、海外観光客を含むのべ約2,900万人の来場者の安全は守られたのです。

©Expo 2025

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会

事業内容

2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の準備および開催運営

特徴

大阪・関西万博の運営において落雷や熱中症などの気象リスクへの対策に「ウェザーニュース for business」を活用

規模

301〜1000名

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