1979年創業の花王ロジスティクス株式会社は、洗剤やシャンプーといった日用雑貨品をはじめ、化粧品などの花王商品の在庫管理や配送、小売りチェーンの共同配送事業を展開し、花王グループの物流業務を担っている。2024年7月より、物流事業者向けの「ウェザーニュース for business」を現場に導入し、従業員の安全対策や年間約24億個の商品の配送計画に役立てています。
経営方針として掲げる「日本一安全で、安心できる物流会社」を実現するため、実際に物流版の気象情報をどのように活用されているのか、花王ロジスティクス株式会社 RC推進部 宮坂俊次氏と中島治氏にお聞きしました。
全国47拠点で従業員の安全を第一に考え、物流専門の気象情報を本格活用
「アタック」「マジックリン」「クリアクリーン」「ビオレ」など、私たちの生活に密着している日用雑貨品などの商品を数多く擁している花王ブランド。花王グループは商品の製造から販売、物流という3事業を自社グループで一貫して展開、欠品や過剰な在庫を限りなくゼロに近づける仕組みを築き上げてきた。
花王ロジスティクス株式会社は、トラック輸送をメインに、船や鉄道、飛行機も利用しながら、花王グループが製造した商品を小売店へと効率的に届けています。
「在庫の保管や管理をしている物流拠点は、北海道から沖縄まで全国47か所。午前中に発注依頼のあった商品を午後に届けたいという小売業の納品制約にも応えられるよう、管轄エリアは1拠点あたり2県程度と比較的近距離。船や飛行機での輸送が必要になる一部地域を除いて、自社・協力会社含めて1日に1300台ほどのトラックを活用して、安全かつ効率的に花王商品を配送しています。なお、自社に関してはEV車7台を含む161台のトラックを保有しています」(宮坂氏)

物流の現場では交通事故をはじめ多くの危険が潜んでいるのも事実。悪天候による道路の通行止めなどの交通遅延や、豪雨や防風といった防災のリスクへの対策も必要不可欠だといいます。
「以前は、従業員が別々の気象予報を見ていましたが、数年前から情報を一元化するために一般向けのウェザーニュースアプリの有料版を活用。一部の従業員が自分の業務に関わる天気をそれぞれ確認していました。その後、全社的に利用するためアカウントを増やす方向になり、人事異動のたびに生じる入退会の手間やコストを削減するために、社内一括で物流業界に適した『ウェザーニュース for business』の導入を検討。トライアル期間を経て、本格的に活用することにしました」(中島氏)

台風や大雪などの荒天時は、ルート変更や配送計画の見直しをはかる
全国47拠点の自動倉庫設備で「ウェザーニュース for business」を導入し、環境や労働安全衛生に努めるRC(レスポンシブル・ケア)推進部のほか、経営幹部や各拠点の運営に携わる職制を中心に約160名が活用。いまは『従業員の安全対策」と『小売店への配送計画』という二軸で利用しているといいます。
「とにかく従業員の人命を守ることが最優先。そのためにも精度の高い気象情報を迅速に知ることは欠かせません。悪天候時の勤務時間中はもちろん、従業員が安全に出退勤できるかどうかも適宜判断します。夏場はドライバーや倉庫内の従業員の熱中症対策にも気を配っています」(宮坂氏)
「次に、私たちの仕事は小売店からの要望にどれだけ応えられるかが重要です。小売店への配送は事前に立てた配送計画に基づいておこなわれますが、悪天候のときはその限りではありません。たとえば台風などの悪天候で道路が通行止めになるリスクがあれば、事前に安全かつ効率のいいルートに変更します。雪の予報が出れば、トラックのタイヤにチェーンを巻くだけでなく、配送計画の見直しをはかります。台風や大雪などで物流に大きな影響がある場合は、予測情報に基づいて従業員の出勤や配送の可否判断をすることもあります」(中島氏)
アプリで通知を受けて、浸水や通行止めなど詳細をPCですぐ確認、対策の迅速化へ
物流の現場に影響を及ぼす気象は、台風やゲリラ雷雨などによる大雨、雪、地震、津波、高潮など。特に商品の保管や管理を平屋倉庫でおこなっている場合は、大雨による倉庫の浸水対策が必要になるといいます。
「2022年はゲリラ豪雨で千葉県柏市にある沼南ロジスティクスセンターが浸水被害を受けてしまいました。晴れている日は積荷を外に置いたり、平置きしたままのことが多いので、倉庫内に雨水が入ると被害が出てしまいます。今は予報をもとに事前に準備する時間があるので、下にパレットを敷いてかさあげし、商品を浸水被害から守ることができる環境になってきました」(宮坂氏)
具体的には、スマートフォンのプッシュ通知で気象リスクを受信した後、パソコン専用のウェブサイトで詳細を確認する、という使い方をしているとのこと。
「ピンポイントで自分の拠点の気象リスクが見られるようになりました。全国47拠点を日本地図にプロットし、台風進路・暴風域予測や交通影響予測など道路のリスクをひとつの地図に重ね合わせて確認できる点も重宝しています」(中島氏)



今後はアプリの活用度を高めて、各拠点の被害を最小限に抑えたい
通知が届くことで社員での利用が増えてきたものの、まだ活用度が低いエリアもあるので、今後は従業員への啓蒙を進めてアプリの活用度を上げていきたいといいます。
「今年の台風でも1日3回ほど販売部門と一緒に対策会議を行い、パレットによるかさあげや従業員の出勤、配送を止めるなど、活用が始まったところです。これからは全国の各拠点が予測情報をさらに活用して、被害を最小限に抑えられるようにしていきたいと思います」(宮坂氏)
気象データを活用することで、これからも「日本一安全で、安心できる物流会社」であり続けたいという花王ロジスティクス株式会社の取り組みは続きます。
「私たちには国民のみなさんに商品を供給している責任があります。その責任をきちんと果たすためにも、安全最優先で物流に携わっていきたいと考えています」(宮坂氏)
