東京都競馬は大井競馬場をはじめ、小林牧場、東京サマーランド、伊勢崎オートレース場など、複数の施設の管理運営を担っています。施設運営において最も重要な要素の一つが、自然災害や悪天候に対する迅速かつ的確な対策です。同社は大井競馬場で大雪による開催中止を経験し、翌年にはウェザーニューズの気象サービスを導入。2025年4月からはさらに機能が強化された法人向けの気象情報「ウェザーニュース for business」を活用しています。各施設での様々な気象情報の活用や今後の展望について、東京都競馬株式会社 施設整備部 施設第二課の髙田 拓也氏に伺いました。
2018年の大雪がきっかけで、高精度の予報が不可欠に
以前は無料のアプリや報道ニュースから気象情報を得ていたため、予報精度の面で不安があったそうです。決定的な契機となったのは、2018年の冬の大雪でした。
「当初『5cm程度』と予報されていた積雪量が、実際には20cmにまで増加してしまいました。ダートコースは20cmを超える積雪になると融雪が難しく、整備にかなりの時間を要します。レースに向けて整備を継続していましたが、施設の運用に支障を来たすこととなりました。そのことから精度の高い気象サービスの導入が急務となりました」(髙田氏)
より確かな情報を活用することの重要性を痛感し、ウェザーニューズにお問い合わせをいただきました。
競馬場のピンポイントな予報で施設管理を最適化
冬季の凍結・降雪や大雨の予報は、競馬場の整備方法を決める重要な情報になります。
「大井競馬場で凍結のリスクがある場合は、ハローと呼ばれる整地用の器具を車両で引くことで、砂を動かし続けて凍結を避ける整備を行っています。凍結や降雪予報はハローがけの作業時間を決める判断材料にしています。
また、100mmを超える雨が降ると、馬場エリアの排水を集める雨水貯留槽が満水となり、運営に支障を来たしてしまいます。そのため、『ウェザーニュース for business』で大雨が予想される場合は、雨水貯留槽の水を事前に処理し、大雨に備えています。また、台風が近づく際には進路予測に基づいて、排水ポンプの点検や建物の屋上などのゴミ詰まりの清掃といった事前点検を実施して、施設への被害を未然に防ぐようにしています」(髙田氏)

東京サマーランドやオートレース場の落雷対策も同時にできる
「ウェザーニュースfor business」の予測は大井競馬場の他にも、東京都競馬が管理する小林牧場や東京サマーランド、伊勢崎オートレース場などの安全管理や運営判断に活用されています。

伊勢崎オートレース場では過去に落雷による被害が多かったため、「ウェザーニュース for business」の落雷リスクモニタリングで雷雲を監視しています。また、屋外プールのあるサマーランドでは、雷雲が近づいた際に場内放送を行うなどの安全対策に利用しています。現場ではスマートフォンのプッシュ通知を積極的に活用して、雷雨や雨雲の接近に警戒しているとのこと。
現場の担当者からは、スマートフォンを使って現場で欲しい情報をすぐに見られるので、運用のしやすさが大幅に向上したという声が寄せられているといいます。
今後は天気予報と観測データの活用を進めて、データに基づく施設管理を目指したい
競馬場の馬場のコンディションをより定量的なデータに基づいて管理していくために、更なる気象活用も考えているそうです。
「馬場の状態は、最も水分が少なく乾燥している状態を『良』として、良・稍重・重・不良の4段階に区分されています。大井競馬場では馬場の砂の水分量を把握するために、気象観測機を設置して競馬場の雨量を毎日測定するとともに、馬場の状態を記録しています。
この気温・降水量の観測データと馬場状態を分析して、『馬場コンディション予測』を確立し、適切なメンテナンス方法を定めたいと考えています」(髙田氏)
馬場を最高の状態に整えたいというスタッフの思いと努力によって、大井競馬場の施設管理は日々進化していきそうです。






























