2013年4月に神奈川県横浜市で開校した慶應義塾横浜初等部は、体験教育・自己挑戦教育・言葉の力の教育という3つの柱を軸に、授業以外にもキャンプや合宿、海の学校など学校行事のカリキュラムが充実していることでも有名です。
そんな慶應義塾横浜初等部では600人以上の子どもたちの安全管理や教育などのため、気象IoTセンサー『ソラテナPro』の観測データと、法人向けのお天気アプリ「ウェザーニュース for business」の気象情報を活用しています。導入のきっかけや活用方法などについて、慶應義塾横浜初等部理科教諭の茅野真雄先生に伺いました。
「百葉箱」からシフトして、風や雨のリアルタイムな観測データを強化
慶應義塾横浜初等部には敷地内に14m×28mの学校菜園があり、夏はエダマメ、冬はダイコンといった様々な作物を子どもの学習サイクルや季節に応じて栽培しています。気象データの活用を検討したきっかけは、従来の百葉箱では計測できない気象要素や“いま”の情報が必要だと感じたからだと先生はいいます。

「データをタイムリーに活用するため、デジタル化された百葉箱を利用していました。気温・湿度・気圧を見ることはできましたが、それだけでは作物の生育管理に使えず、物足りなさを感じていました。
『ソラテナPro』は7つの気象要素(気温、湿度、気圧、風向、風速、雨量、照度)を1分ごとに測定できます。これは作物の対策に有用で、たとえば風速がわかれば、作物の生育のサポートや保護のためのマルチフィルムやトンネル資材や、子どもたちがアサガオなどを植えたプラスチック鉢が飛ばされたり、倒れたりしないように防ぐことができます」(茅野先生)
そこで、2024年8月から『ソラテナPro』を導入しました。荒天時の雨風対策だけでなく、夜間の降水量をいつでも携帯やタブレット端末で確認できるため、水やりの有無やタイミングを効率的に判断できるようになったと先生はいいます。

他にも、毎年12月に開催される「天体観察会」という夜の課外活動で、『ソラテナPro』のリアルタイムの風向と湿度の観測データを活用しています。
「観察会の実施には、『雲は少なくて無風。あるいはやや北風が吹いている』という条件が理想的です。『ソラテナPro』を活用すると、観察会直前の風向きや湿度なども正確に把握できるので、実施判断を精緻におこなえるようになりました。
現在は、『ソラテナPro』の観測データと『ウェザーニュース for business』の予報を組み合わせて、学校菜園や天体観察会だけでなく、子どもたちが安全で充実した学校生活を送るために気象データを活用しています」(茅野先生)
修学旅行や合宿の安全対策にも活用、遠方の気象情報を引率教員で共有
年間を通じて宿泊を伴う校外学習の機会が多い慶應義塾横浜初等部では、『ウェザーニュース for business』を山中湖キャンプや八ヶ岳クラブ合宿、九州の修学旅行などでも積極的に活用し、利便性の高さを実感しているとのこと。今後も気象データを子どもたちの安全管理に役立てていきたいと先生は話します。
「台風シーズンに遠方へ校外学習に行く際は、台風の接近予測を早めに知ることができる『ウェザーニュース for business』が役に立ちます。3つのライセンスを活用して最新情報を引率の教員同士で共有し、天候悪化に備えて行動スケジュールを変更するなど、子どもたちの安全を守りながら学習を継続させることも可能になります。
また、普段から登下校時の雨雲レーダーはチェックしており、荒天時は雨がひどくないタイミングで下校できるように心がけています」(茅野先生)
天気の急変が激しい昨今、体感だけで今後の行動を的確に判断するのは難しいと感じることが増えているだけに、子どもたちの安全を守るためにも精度の高い気象データは欠かせないと先生はいいます。

暑さ指数のモニタリングで、児童の体調不良者数ゼロを達成
「10月開催とはいえ運動会の季節も、予行練習の段階から『ソラテナPro』は頼りになります。2024年秋の運動会は、夜通し降っていた雨の影響で温度と湿度が上昇し、子どもたちの熱中症にも注意が必要になりました。10時から気温が急上昇し、最終的には30℃を超えました。湿度も70%以上あり、蒸し暑さを感じるほどでした。
もちろん、あらかじめ熱中症対策として注意喚起のアラート設定をしてはいるものの、子どもの体力を考慮するとアラートが発表されてから対策をとるのでは遅すぎると思っています。スマホやPCの画面で『ソラテナPro』で暑さ指数を常時チェックできるようになったので、対応がスピーディーになり、子どもたちの安全管理は格段に向上したと言っても過言ではありません」(茅野先生)
実際、運動会当日は温度・湿度のグラフの推移を見て、午前中に休憩を増やす判断をした結果、子どもたちの体調不良もなく、安全に運動会を終えられたと先生はいいます。

今後は子どもたちの「体感」と「実際のデータ」をつなげて学びの機会に
茅野先生は引き続き、校外学習や学校行事など子どもたちの安全が最優先という場面で、すべての教員が迅速に対応できる体制をより強化していくことはもちろん、今後は校内に観測データが表示される大型ディスプレイを設置するなど、子どもたちが天気に関心を持つ環境を提供していくそうです。

「たとえば、『今日、急に寒さを感じたのは、寒冷前線が通過して冷たい空気が入り込んできたからだな』というように、自分で体感したことと実際のデータを合致させて考えることができれば自分なりの気象の知見を増やすことができます。
自分の身近に起こった体験が学びにつながるきっかけになれば、教員としてこんなにうれしいことはありません。低学年にとっても将来理科を学ぶ準備になると考えています」(茅野先生)
慶應義塾横浜初等部は、子どもたちの安全管理と教育効果の向上のために、今後も気象データ活用の幅を広げていきたいと意気込んでいます。
