1901年の創業以来、クリームパンや純印度式カリーなど、それまでの日本になかったさまざまな「食」を生み出した中村屋。なかでも、1927年に「天下一品支那饅頭」という名称で登場した中華まんは、発売から100年近く経った今も老若男女に親しまれている大ヒット商品です。
中村屋の中華まんは、主にコンビニエンスストアやスーパー・百貨店などで販売されていますが、季節や気温によって需要が大きく変動します。そこで中村屋では、肉まんやあんまんなどの中華まんの需要予測や在庫管理、配送効率化のために、企業専用の気象情報「ウェザーニュース for business」を導入しています。気象情報の活用方法について、中華まんの需給調整・配送管理に携わる株式会社中村屋 ロジスティクス部の井上氏と佐藤氏に伺いました。
気温の変化によって大幅に変わる出荷数、正確な需要予測が課題に
中村屋は一年を通して中華まんを生産、販売しています。例年最も売れるのは気温が下がる11月から1月ですが、暖冬になると出荷数が減ってしまい、正確な需要予測は難しいといいます。
「中華まんは、関東の3工場で生産し、全国に配送します。最盛期には1日最大100万個を生産することもあります。ただし、気温の変動によって出荷数が敏感に、かつ大きく変化するため、天候にもとづいた正確な需要予測は常に必要としていました」(井上氏)

また、中村屋では時代と共に変化するお客さまのニーズや嗜好にあわせて、毎年改良を行っています。そのため旧商品の最終在庫調整をする上でも課題がありました。
「あたたかくなる春から夏にかけて販売量が減少していくのですが、秋には年1回のリニューアルがあるので、8月から9月にかけて在庫を抑制する必要があります。在庫管理をする上で気温が重要な情報になりますが、これまでは複数の気象サイトを比較していたので情報にバラつきがありました」(佐藤氏)

長期の気温データを活用して『中華まん指数』を独自開発、在庫数を前年の半分以下まで削減
企業向けの「ウェザーニュース for business」では、日毎の予想最高気温&気温差や6か月先までの長期予報など様々な気象情報について、工場や販売エリアごとに確認することができます。また、翌日や週間のタイムリーな予報に加えて、前年比や平年比などの気象データを上手く使うことで、見通しを立てやすくなり、課題だった“需要予測”と“在庫管理”をスムーズに行えるようになったといいます。
「週3回の会議で状況を確認し、生産調整をしています。その際、『ウェザーニュース for business』で販売エリアの気温マップを見て、全国の需要動向をリアルタイムで共有しています。視覚的に瞬時に把握できるため、短時間でのミーティングでも迅速に共通認識を持つことができます」(井上氏)

加えて、中村屋は毎年秋のリニューアル前に旧商品の在庫数を抑制するため、気象データを活用して独自に「中華まん指数」を作成し、日別の出荷予測数を予測しています。「中華まん指数」を用いることで、2023年は終売時の在庫数を前年の半分以下まで削減できたといいます。
「春先からの在庫調整においてはウェザーニューズご担当者様にもご相談させていただき、1か月先までの気温予測データも利用しています。気温と出荷数を分析して独自に『中華まん指数』を作成して、ロスをなくすための在庫の絞り込みに重宝しています」(佐藤氏)
荒天による交通影響も考慮した配送計画で、商品をより確実に納品先へ届ける
さらに、中村屋ロジスティクス部には中華まんを納品先に確実に届けるというミッションがあります。そのため「ウェザーニュース for business」は、配送業務にも活用されています。気象情報をもとにした迅速な判断が可能になり、荒天対策のスピードが向上。関係部門同士の連携もスムーズになり、イレギュラーな配送計画も時間をかけずに立案できるようになったといいます。
「たとえば台風が来る場合は、配送トラックの台数を増やしてリスクヘッジします。日配品は定刻での配送が求められるため、台風情報をもとにした車両の確保は重要です。
『ウェザーニュース for business』では、マップ上に自社の工場や物流拠点を登録し、それぞれのエリアへの影響度や影響時間帯を確認することができます。高速道路などの交通影響予測とあわせ、配送業務のリスクを把握できるようになり、以前より正確な配送計画の策定も可能になりました」(井上氏)
「導入後は、全員が同じデータを見ながら意思統一を行えるため、スピード感をもって意思決定できるようになりました。沖縄への台風接近時にも、配送リスクを事前に把握することで、必要な船便の確保や在庫の増減がスムーズに行えるようなったのはとてもありがたいです」(佐藤氏)

物流会社との気象連携も視野に入れた確実な配送の実現や、在庫管理の高度化を目指す
商品を安全に確実に届けるために、将来的には社内だけでなく協力会社との気象情報の連携も進めていきたいと話します。
「現在は弊社から物流の協力会社様に荒天時の注意喚起を発信しています。将来的には、協力会社側でも『ウェザーニュース for business』の気象情報を見てもらえれば、共有データを基軸により迅速な対応ができるようになるのではないでしょうか」(井上氏)
また、気温と出荷数の知見を蓄積することで長期的な需要予測の精度を高め、さらなる在庫管理や配送業務のコストの減少にもつなげていきたいといいます。
お客様が求める「真の価値を追求し」、実現を通してお客様と関係する企業や従業員が「その喜びを分かち合う」という理念のもと、安心のおいしさとサービスを届けるためにあたらしい挑戦を続ける中村屋に今後も注目です。