「雪の宿」や「ぱりんこ」など、世代を超えて愛される米菓を製造する三幸製菓。新潟県の荒川工場では、日本海側特有の冬場の雷による“瞬停(1分未満の瞬間的な停電)”が生産ラインに大きな被害をもたらすという課題を抱えていました。同社がいかにして目に見えない落雷リスクを克服したのか。法人向け気象情報「ウェザーニュース for business」の「落雷リスクモニタリング」と回転灯を活用した工場の落雷対策について、生産部 生産課 課長の永岡侑真氏とエンジニアリング課の伊島一誠氏にお聞きしました。
冬は日本海側の工場で「瞬停」が多発、たった数秒の停電でも数時間のおせんべい生産停止や大量廃棄を招く
三幸製菓の荒川工場では、2025年2月からコージェネレーションシステム(熱電供給システム)を本格稼働。発電装置で作られる電気と排熱の両方を工場内で活用することで、エネルギー効率の最適化やCO2排出量の削減を推進しています。その過程で、あらためて“瞬停”のリスクの大きさが顕在化したといいます。
「米菓工場にとって落雷の最大のリスクは“瞬停”です。発生は数秒でも、一度製造機械が停止すれば復旧までに数時間を要することも珍しくありません」(永岡氏)
新潟のような日本海側のエリアでは、冬場に雷が多発します。多いときでひと冬に変電所由来の瞬停に2〜3回見舞われることも。工場への影響は避けられず、事前に具体的な対策を打つことは難しかったといいます。

特に、稼働中の生産ラインが停止すると、米菓の生産に深刻なロスが出てしまいます。
「例えば、約100mの乾燥機が瞬停で止まると、その中にある10段分、距離にしてコンベア約1km分のおせんべいが廃棄になるリスクがあります。全工程が機械で連動しているため、一か所の停止が工場全体のストップを招くのです」(伊島氏)
「雷が落ちてから対応する」という状況を打破するため、瞬停の被害を最小限にとどめる方法を模索し、「ウェザーニュース for business」の「落雷リスクモニタリング」に決めたといいます。
「落雷リスクモニタリング」は工場周辺の落雷実況監視のほか、雷雲の動きや警戒時間などを予測し、メールやプッシュ通知で雷雲の接近や警戒解除をお知らせするサービスです。企業側で落雷監視エリアを事前に設定できるので、雷雲から工場までの距離が10kmや5kmの場合など、雷雲の接近に応じた対応をあらかじめ決めておくことで、落雷のリスクを最小限に留めることができます。
落雷リスクのメール通知をトリガーに回転灯を光らせる、全員の視界に入る仕掛けが◎
荒川工場では導入するにあたって、従業員への情報の届け方を工夫しています。単に管理者がメールを受け取るだけでなく、現場の全員が瞬時に状況を把握できるよう、メールと回転灯を連動させてライトが点灯する仕組みにしています。
「工場の監視エリアで落雷リスクが高まるとウェザーニューズからメール通知が届いて、同時に事務所に設置した黄色の回転灯が点灯します。パトカーの赤色灯のように、意識していなくても視界に入る仕掛けにしました」(伊島氏)
工場内で約30名の従業員が点灯を目視で確認。同時に管理者にもメールやプッシュ通知で情報が共有されて、生産ラインの事前停止など必要に応じた判断が瞬時に下されます。
「これまでは個人の勘や空模様で判断していましたが、今は監視エリア内に入ったという客観的なデータがあります。雷が落ちてから考えるではなく、もし今止まったらどうするかという視点の会話が増えたことはとても大きな変化でした」(永岡氏)
また、落雷リスクが低下すると、警戒解除の通知を受けて回転灯が消灯するため、工場を再稼働する一つの目安としても活用しているといいます。「点灯したら警戒、消灯したら解除」というシンプルな可視化が、現場の意思疎通をスムーズにしているそうです。
目にみえる落雷アラートで即座に対応、「瞬停」による生産ストップはゼロへ
落雷リスクの「目に見えるアラート」は、現場の行動に大きな変化をもたらしているようです。
「導入から半年間で5回ほど点灯しましたが、瞬停で停止したケースはゼロでした。点灯が現場に危機感をもたらし、万一の事態に備えるための行動が事前にとれるようになったことは大きいです。回転灯が消灯すれば、リスクが去ったという再稼働の目安にもなり、意思決定のスピードが格段に上がりました」(伊島氏)
「情報の見える化によって、スタッフに安心感と納得感が生まれました。ウェザーニューズのデータは現場の複合的な判断を支える重要なピースになっています」(永岡氏)
様々な方法で落雷対策に取り組んでいる同社ですが、荒川工場に特化した雷情報が判断材料に加わったことで、従来の勘と経験に頼る意思決定から一歩進み、事前の対策や客観的な議論ができるようになりました。
災害時は荒川工場を住民に開放、地域の安心を支える拠点になりたい
落雷対策で米菓の生産ロス低減を実現している三幸製菓ですが、その視線はさらに先、地域貢献へと向いています。荒川工場は高台に位置し、自家発電設備や井戸水、そして米菓を中心に潤沢な備蓄食料を備えた“災害に強い工場”です。荒川工場が立地する新潟県村上市とは「災害時などにおける避難場所としての使用に関する協定」を締結しており、災害時には地域住民の避難所として機能する体制を整えています。
「電力・水・食料のすべてが揃っているのが荒川工場の強み。今後は防災拠点としての工場の存在価値をもっと地域の方々に知っていただきたいと考えています」(伊島氏)
「安全・安心」を掲げ、食を通じて幸せのシーンをお届けすることを理念とする三幸製菓。同社は気象情報を活用して、食の安全だけでなく、地域住民の安心まで広い視野で取り組み続けます。


































