導入事例

つくば市

市長公室危機管理課 課長 岸田和克子氏、主査 吉沼佑亮氏

高精度な気象データで台風接近時における避難所の開設判断を迅速化、夏祭りの安全対策にも活用

茨城県つくば市は約160の研究機関が集まる「科学のまち」として知られる一方で、登山や観光地として人気の筑波山もあるなど都市と自然が共存している街です。そんな街の特色を活かしたまちづくりを進めるつくば市では、市民がより安心して生活を営むための取り組みのひとつとして法人向け気象情報「ウェザーニュースfor business」を導入しています。街の防災にどのように活用されているのか、つくば市市長公室危機管理課 課長 岸田和克子氏、主査 吉沼佑亮氏に伺いました。

鬼怒川決壊で高まる危機意識、茨城県南部という広域な気象情報で市民の安全を守れるのだろうか

つくば市の危機管理課はこれまで、ネットで閲覧できる気象情報や気象庁から配信される情報により気象情報を取得していましたが、平成27年9月の関東・東北豪雨による隣接市での河川氾濫をきっかけに意識が変わったと言います。

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つくば市市長公室危機管理課 主査 吉沼佑亮氏と課長 岸田和克子氏

「警報が発表される可能性を確認するためにこれまで閲覧していた気象庁の早期注意情報は、広い県域を大まかに南北で二分したものであるため、つくば市に特化した防災対応を判断するには、十分な情報とはいえない部分があると感じていました」(吉沼氏)

「つくば市は東西を流れる2つの一級河川沿いを中心に洪水浸水想定区域が広がっているほか、筑波山麓の広範な地域が土砂災害警戒区域に指定されています。また、近年多くなってきた記録的短時間大雨や線状降水帯により、中小河川における水害のリスクも高まっています。2012年には市北部で竜巻災害が発生したほか、2015年に隣接する常総市で鬼怒川が決壊した際には、常総市ほどの被害は受けませんでしたが、多くの常総市民を市内の避難所で受け入れ、深刻な被害状況を目の当たりにしました。それ以降、風水害への危機意識はより高まり、精度の高い気象情報の必要性を感じていました」(岸田氏)

そうした背景もあって、市の防災対策をより強化するため、ピンポイントの情報をリアルタイムに提供する法人専用の気象情報サービス「ウェザーニュースfor business」を導入。「雨雲レーダー」や「河川水位情報」などを参考に、台風や大雨に伴う避難情報発令の判断や、災害発生に向けた初動体制の確保に活用し始めました。

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荒天時は予報をもとに対応方針を議論している

台風接近時における避難所開設の判断に加え、夏祭りの雷雨対策にも活用できた

気象情報の活用法として特に重要なのが、台風や大雨に伴う避難所の開設判断だといいます。

「2024年8月に台風7号が接近した際、つくば市では避難指示の発令には至りませんでしたが、台風の進路や暴風域の予測、雨量データなどをパソコン版の専用サイトから確認して、自主避難所を開設しました。幸い、台風は直撃しなかったものの、局地的な豪雨や強風のリスクを考慮し、市民の安全を第一に考えた避難所の開設判断ができました」(吉沼氏)

また、1981年からはじまり毎年8月下旬に開催され、今では来場者40万人を超えるつくば市最大のイベント「まつりつくば」でも活用されたとのこと。

「2024年の開催日は、日中は気温30℃を超える猛暑日でしたが、大気の状態が非常に不安定だったこともあり、常にスマホ版で気象状況をチェックしていました。落雷リスクモニタリングの情報をもとに、早めに来場者へのアナウンスやSNSによる注意喚起を実施し、幸いにも会場内での落雷はありませんでしたが、混乱や事故発生のリスクを回避することができました」(岸田氏)

市では年間を通じて屋外で多くのイベントを主催しており、イベントを安全に運営する上で、局地的な天候の変化を把握することは必要不可欠。「ウェザーニュースfor business」の導入後は、防災対応だけでなく、今後もさまざまな局面での活用が期待できそうだと話します。

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「まつりつくば」は8月下旬の土日2日間、日中から夜9時頃まで長時間開催される

ベテラン職員の経験に頼らずとも、タイムリーで適確な防災対応が可能に

「ウェザーニュースfor business」の気象情報を活用した実感として、ベテラン職員の経験や勘が頼りだったこれまでの防災対応のあり方から、誰が担当してもタイムリーに適確な判断・対応ができるようになっていく手応えを感じていると言います。

「全職員で信頼感が高い資料をリアルタイムに共有できるようになり、判断のスピードが向上しました。気象概況やつくば市への影響度がわかりやすく、上司に説明する際にも活用しています。台風7号のとき、収集した多様な情報に基づいて従来なら開設していなかった自主避難所を設置できており、市民の安全安心につながったと感じています。」(吉沼氏)

「人事異動によって、知識や経験がゼロの状態で防災対応を担う部署に配属されるケースもあります。その場合でも、精度の高い気象情報や詳しい分析があることで、安心して判断を下すことができます」(岸田氏)

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市役所や学校(各指定避難所)など地点ごとの気象リスクも確認する

幅広い市民サービスに気象データを役立て、安全で暮らしやすいまちづくりへ

「ウェザーニュースfor business」の導入により、防災対応への活用に確かな手ごたえを実感している危機管理課では、このサービスをさらに活かしていきたいと考えているそうです。

「今後は過去の災害発生時のデータと現在の情報を照らし合わせて、より正確な予測を立てられるようにしたいです」(吉沼氏)

「気象データを使いこなすのは難しいイメージもありますが、その情報が分かりやすく、活用しやすい形であれば、当課に限らず、多くの部署がそれぞれの業務に有効に生かすことができるでしょう。児童生徒の登下校時間の調整や、熱中症対策、イベント・行事の態度決定や安全対策、工事の進行判断、消防の出場体制の構築など、各部署の担当分野と気象データが結びつくことで、私たちが市民に提供できる安全安心は、より大きなものになっていくのではないでしょうか」(岸田氏)

防災対応の一環としてだけでなく、市民の安全安心のため、気象データをより深く、幅広く活用していきたいと意気込むつくば市。ぜひ今後も、ウェザーニューズのサービスをフルに活用していただきたいですね。

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画像提供:つくば市

つくば市

事業内容

住民向けの様々な行政サービスやまちづくり

特徴

防災対応を中心とした行政としての安全対策に気象情報を活用

規模

1001〜5000名

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