デリー・インディラ・ガンディー国際空港(VIDP/DEL)はインド最大の航空ハブであり、毎年冬季に頻発する濃霧が航空運航に深刻な影響を与えています。
大気の乾燥度や砂漠地帯が近いこともあり、また、家々や工場からの煙が寒候期に顕著であることから、視程障害現象は通年で毎日生じています。 本稿では、気象学の観点からVIDP空港における放射霧の形成メカニズム、発生パターン、および運航対応のポイントについて分析します。
VIDPの放射霧
空港概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ICAOコード | VIDP |
| IATAコード | DEL |
| 正式空港名 | DELHI Indira Gandhi International Airport |
| 運用 | Delhi International Airport Private Limited(DIAL) |
| 運用時間 | 24時間運用 |
| 位置 | インド共和国デリー首都圏 南西デリー区(デリー市中心部から約16km南西) |
| 緯度経度 | 28°34′07″N 077°06′44″E |
| 標高 | 777 feet / 237 meters |
発生時期
VIDP空港で発生する霧は、放射霧の場合がほとんどです。
放射霧の出現開始は、10月下旬~12月にかけて、西方擾乱(Western Disturbance)の通過によって湿った大気が夜間の強い放射冷却現象によって冷やされることによって早朝に発生するようになります。
霧発生の時期は、10月下旬~3月下旬の5か月間です。その中で、頻発するのは1月で、月間平均25日以上も発生しています。次いで12月の約15日で、年間合計で60日以上です。なお、FG(霧)にMIFG(浅霧)を加えると、1月はほぼ毎日発生と言っても過言ではありません。
発生原因
内陸部の広いほぼ平地にある空港で、夜間の放射冷却現象が強いことが原因です。
一般に、夜間放射冷却現象が強い季節のインドの平地での明け方の時間帯には、地表から高度200m付近まで強い気温の逆転層が形成され、地表から200mほど上昇する間に気温が10~15℃も上昇する構造となり、これが濃い霧の原因となります。
この気温の逆転層が解消されるまで霧は持続するので、その把握が重要です。
発生条件
一般に気温と露点温度との差が1℃未満になると水蒸気が飽和に近くなって霧が発生すると言われていますが、VIDPではその差が約3℃でも霧が発生しています。
過去の事例から、以下の条件がそろったら霧発生が予想されます。
*SKC(快晴)/NSC(重要な雲なし)/FEW(少量)/SCT(散在)
*HZ(煙霧)/FU(煙)/BR(もや)
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 季節 | 10月下旬から3月下旬までの期間 |
| 出現時間帯 | 日没から約3時間または現地時間午後7時(1330UTC)以降、午前5時(2330UTC)頃までの間 |
| 消散時間帯 | 午前11時(0530UTC)頃に消散開始 |
| 雲の状態 | SKC/NSCの状態、もしくはFEW/SCT100程度の雲の状態 |
| 温度変化 | 霧発生前はHZ/FU/BR等の天気状態で気温と露点温度の差は5℃以上あったが、日没とともに急速に気温が低下し、その差が3℃未満となると霧の形成が始まる。外気温度の監視が重要。 |
| 風 | 無風状態が最も多いが、風向には特徴はなく、いずれの風向でも霧は発生する。風速は6KT以下の場合がほとんど。 |

運航判断の課題
VIDPの放射霧は、以下の点で運航判断を難しくしています。
これらの課題に対応するには、複数の予報モデルを比較し、信頼度を客観的に評価できる仕組みが必要です。
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| 発生タイミングの予測困難 | 気温と露点温度の差が3℃でも発生するため、一般的な霧予測基準が適用しにくい |
| 消散時刻の不確実性 | 逆転層の解消タイミングに依存し、午前11時頃まで持続する場合も |
| 複数モデル間の予報差 | 霧の発生・消散予測は数値予報モデル間でばらつきが大きい |
| 判断の属人化 | ベテランの経験に依存し、チーム間で判断基準が統一されにくい |

























