各国の予測モデルによると、現在発生しているエルニーニョ現象は9月から1月頃にかけてピークを迎える見込みです。海面水温の偏差は各国モデルで+2.5℃以上と予測されており、特にオーストラリア気象庁(BoM)の+3.0℃〜+3.5℃程度、欧州コペルニクス(Copernicus)の+4.0℃〜+4.1℃という予測もあり、史上最強クラスに発展する可能性があります。
これに伴い、今冬は東アジアをはじめ北米や欧州など世界各地で特徴的な気候パターンが現れる見通しです。偏西風(ジェット気流)の蛇行や低気圧の通過頻度の変化、地域ごとの寒気・暖気の偏りは、航空路の飛行計画や空港の冬季運航オペレーションにも一定の影響を与えると考えられます。
1. 各地域の気候予測のポイント
東アジア(中国・日本付近)
気候傾向:暖冬(高温)傾向がベースとなりますが、低気圧や前線の影響を受けやすく「多雨・多雪」に傾きやすい時期です。
偏西風(亜熱帯ジェット気流)が中国南部で南に蛇行し、日本付近で北に蛇行する典型的なエルニーニョパターンになります。
この影響で、日本付近には南から暖かく湿った空気が流れ込みやすくなります(フィリピン海高気圧の強化を反映)。日本南部海域や太平洋側では偏暖気流に覆われやすく、持続的な厳寒となることは極めて稀です。
11月〜1月にかけて、中国大陸から日本付近は降水量が平年より多くなる(湿潤)と予測されています。また、冬型気圧配置(シベリア高気圧の張り出し)が弱く寒気が入りにくいため全国的に気温は高めですが、本州南岸を南岸低気圧が通過しやすくなり、雨や(一部寒気が残るタイミングでは)関東などで雪をもたらす頻度が増加します。
オーストラリア
気候傾向:11月にかけてオーストラリア北部モンスーンは抑制されやすい背景ですが、12月〜1月にかけて段階的に変化します。
12月は、北部(10-25S/120-145E)のモンスーン降水量が概ね平年並みと予測されています。
しかし、ピークを過ぎる1月には、降水量が平年より少なくなる傾向が予測されており、東アジアの冬季モンスーン(冬型の気圧配置)をさらに弱める(暖冬を後押しする)大気パターン(WPパターン)に繋がっていきます。
北アメリカ(米国・カナダ)
気候傾向:11月〜1月にかけて、典型的なエルニーニョの影響である「PNA(太平洋-北米)パターン」が非常に明瞭になります。
上空の500hPa高度場において、アラスカ湾付近で負偏差(低気圧発達・東偏しアラスカ湾で発達)、カナダ(特に北部など)で強い正偏差(暖気)、米国中東部は負偏差(寒気)が卓越する典型的な波列パターンを示します。
これにより、アラスカやカナダでは平年よりかなり暖かくなりやすい一方、米国中東部などでは寒気の影響を受けやすい対照的な気候偏差が現れます。
ヨーロッパおよび極東中高緯度
気候傾向:11〜12月にかけて北極からの寒気の流れ出しが少なく、中緯度は高温になりやすく、ユーラシア大陸も広く高度が正偏差(暖高気圧)に覆われやすくなります。
1月になると北極からの寒気の流れ出しも発生するようになりますが、シベリア高気圧が南東へ張り出す勢力は平年より弱い状態が続き、中高緯度の広い範囲で寒気の直接的な南下が抑えられ、全体的な高温基調を支えることになります。
2. 航空業界・運航オペレーションへの影響
上記の気候傾向を踏まえ、航空運航においては以下の点への留意が想定されます。
① 航路・上空風への影響
太平洋路線(アジア ⇔ 北米)
エルニーニョ現象に伴う大気循環の変化により、太平洋上空のジェット気流の位置や強さが平年と異なる可能性があります。アジア-北米間の航路では、追い風・向かい風の強さや位置が変化し、飛行時間や燃料搭載量の計画に影響する可能性があるため、日々の上空風予測を確認することが重要となります。
東アジア域内航路
亜熱帯ジェット気流の蛇行や強弱の変化に伴い、同緯度帯を通過する航路では風向・風速が大きく変化する可能性があります。ジェット気流周辺では乱気流(晴空乱気流を含む)への注意が必要となります。
② 空港・地上運航(発着環境)への影響
日本国内(特に関東など太平洋側の主要空港)
全体としては高温傾向が見込まれる一方、南岸低気圧などの影響を受ける際には、本州南岸の空港で降水となる可能性があります。地上付近に寒気が残るタイミングで南岸低気圧が通過した場合には、関東平野部でも湿った雪となる可能性があり、航空機の防除氷(De-icing)や視程低下に伴う発着調整への備えが重要となります。
北米中東部・カナダの就航地
北米では地域によって気温・降雪傾向が異なることが予想され、特に米国中東部などでは寒気の南下に伴う降雪や着氷の影響に注意が必要です。空港運用においては、滑走路除雪や防除氷作業による運航への影響を考慮する必要があります。
ヨーロッパ就航地
ヨーロッパでは全体として高温傾向が見込まれる一方、前線や低気圧の通過に伴う強風・降水、低視程など、冬季特有の気象リスクへの対応が引き続き重要となります。

























