首都圏を中心に、良質な住まいを供給し続ける総合不動産デベロッパー、日鉄興和不動産株式会社はマンションブランド「LIVIO(リビオ)」をはじめとする多彩な住宅事業を展開しています。近年は、ゲリラ豪雨や浸水被害が深刻化するなか、同社では法人向け気象情報「ウェザーニュース for business」とクラウドカメラサービスを活用し、リアルタイムの現場監視や気象データを基にした迅速な意思決定により、入居者の安全確保と物件の品質管理を強化しています。
マンション管理における気象情報の具体的な活用方法などについて、都市事業本部 運営技術部 部長の木原英明氏と住宅事業本部 技術統括部 部長代理の平井理雄氏にお話を聞きました。
水害経験を教訓に、BCP対策を「地震」から「水害」に拡大
気象情報の活用に注力し始めたきっかけは、2019年の台風19号による、都市部での建物浸水被害でした 。当時は「内水氾濫」に対するリスク認識が十分ではなく、具体策も不足していたといいます 。同時にゲリラ豪雨が社会的な課題となっており、これまでの地震対策を主体としたBCPだけでは不十分だと感じ、水害対策へと範囲を広げていきました。
「地域行政が公表するハザードマップなどに準じて建設地に適した止水対策などを講じて建設を行いますが、その際は、設計や施工でどのような配慮をしていたかが問われます」(平井氏)

2020年頃には、電気設備や居住スペースを2階以上に配置するなどの設計施工基準を策定。しかし、災害級の荒天を事前に察知することや、災害発生時に現場の状況を迅速に把握することは難しく、基準を設けるだけでは十分とは言えない状況だったそうです。
こうした課題を背景に、日鉄興和不動産では策定した基準をより実効性のあるものにするため、物件が立地するエリアのピンポイントの天気予報を導入しました。加えて、物件周辺の状況をリアルタイムに把握するため、クラウドカメラも導入し、現在も設置を拡大しています。
導入の決め手は、気象情報とクラウドカメラの映像の確認が「ウェザーニュース for business」のアプリ内で完結し、複数のマンションの状況をシームレスに把握できる点でした。
「従来の監視カメラは物件ごとに通信インフラやアプリが異なって、複数のアプリを使い分ける必要があり、運用が複雑化していました。これ一つで把握できるのは大きなメリットです」(平井氏)
このクラウドカメラは、ライブカメラ映像のリアルタイムな監視だけでなく、過去1週間分をさかのぼって確認することができます。これにより、被害が発生した瞬間の状況や気象の変化を振り返り、事後の検証に役立てることも可能です。なお、映像はセキュアな環境で管理され、関係者のみ閲覧できるため、プライバシーに配慮して運用されています。
クラウドカメラサービスと企業専用のアプリによる「多角的な現場監視」が可能に
現在、賃貸マンションを中心にクラウドカメラを順次設置し、大雨などの気象リスクの監視に利用しています。万が一、浸水でエレベーターが止まれば、復旧に多大な時間とコストがかかり、入居者の生活に甚大な影響を及ぼします。
「特にエントランス付近をクラウドカメラで監視することで、浸水を防ぐために止水板などを設置するかどうかの判断がしやすくなります」(木原氏)
また、「ウェザーニュース for business」ではカメラ映像だけでなく、予報や実況データも確認できます。日鉄興和不動産は事前対策として物件のピンポイントの予報を確認し、いざという時にはカメラ映像や実況値をモニタリングすることで各拠点の影響把握に活用しています。
「災害に対して「先に知ること」が第一、次にカメラで状況把握をすることが第二に重要だと考えています。導入前は被害が起きてから事後的に状況を知るケースもありましたが、現在はアプリ上で予測と実況を照らし合わせ、先手を打てる体制を構築しています」(平井氏)

さらに、日鉄興和不動産では竣工後のマンション管理だけでなく、施工中の建設現場でも、風予測や熱中症情報を現場作業員への周知や安全管理に活用。建築中から竣工後まで、作業員と居住者の方の安全を守っています。
予測で先手を打ち、実況で判断する。いざというときの初動を早める情報活用の習慣化
導入後は、部署のメンバーがスマートフォンのプッシュ通知に対して敏感に反応するようになったといいます。
「あらかじめ気象の変化を察知し、次に『クラウドカメラで今の状況を正確に把握できる』というステップが、入居者への適切な指示出しや復旧に向けた準備を、現場に到着する前段階から進めることにつながっています」(平井氏)
現在は管理職以上にアカウントを付与し、スマートフォンのアプリやパソコンからいつでも見られるようになっています。
「日常的にスマホで気象情報をチェックすることが習慣になってきて、有事の際の迅速な対応力が向上していると感じます。以前よりさらに『ウェザーニュース for business』のログイン率も高まっていて、事前察知・実況把握双方の観点で欠かせないツールとして定着しています」(平井氏)
「クラウドカメラ」の導入を後押ししているのが、Wi-Fi環境さえあればいいという設置のしやすさです。
「多くのマンションでは管理員室にWi-Fiルーターが設置されているため、既存の通信環境を活かしてスムーズに運用を開始できます 。分譲マンションへの導入にはまだハードルもありますが、まずは賃貸物件を中心に設置を増やしていく予定です」(平井氏)
施工段階から入居後まで「安心」を継続、気象IoTセンサーとアプリ活用で一歩先行く防災対策へ
不動産と水害のリスクは切っても切り離せません。そのため、今後は単なる管理者の状況把握にとどまらず、水害時における居住者への周知や防災活動を進めていきたいといいます。
「例えば、施工現場に気象IoTセンサー『ソラテナPro』などの観測機器を導入することを視野に入れています。万が一の事故の際にも当時の気象条件がどうであったかを数値で証明できる体制を構築することで、さらに安心・安全できる環境づくりを目指したいです」(平井氏)
また、観測機やカメラのようなハード面だけの対策ではなく、アプリを活用して防災イベントや防災訓練を通知するなど、ソフト面でも物件の付加価値向上につながる取り組みを考えていきたいと意気込みます。
日鉄興和不動産は、気象情報を単なる予報としてではなく、大切な資産と入居者や施工に関わる作業員の安全を守るための重要な経営データとして位置づけています。
「最新の気象テクノロジーを活用した安心・安全な住環境の実現を目指したい」と語る同社の取り組みは、不動産業界におけるBCPの新たなスタンダードを築きつつあります。


































