2026年、ギリシャでは7月末から大規模な山火事が相次いでいます。ウェザーニューズでは、日本の気象庁(JMA)、米国GFS、ECMWFなどの公開気象データのみを利用した場合を前提に、7月28日から8月中旬にかけての山火事による社会・経済的影響を試算し、約218億円(約1.34億ユーロ)という結果になりました。これは公的機関による確定被害額ではなく、ウェザーニューズによる独自の速報推計です。
クレタ島からハルキディキまで、各地で延焼
2026年7月29日から30日、クレタ島南部のレティムノ県では深刻な山火事が発生し、消火活動にあたっていた消防士2名が死亡しました。また、同日にはペロポネソス半島の別の山火事対応中にも消防士1名が7月29日に死亡しています。報道によれば最大125km/h(約35m/s)に達する強風が消火活動を妨げ、7月31日時点でも完全な鎮火には至っていませんでした。周辺地域では、リゾート地アギア・ガリーニを含む地域全体で約8,000人が避難したと報じられています。
パロス島でも新たな火災が発生し、7月31日には南エーゲ海諸島でカテゴリー4(Very High)の火災危険度が発表されました。首都アテネ近郊のアッティカ県は7月31日はCategory 4(Very High)、8月14日はCategory 5(Extreme)に指定され、8月2日には消火活動中に消防ヘリコプター2機が空中衝突し、乗員2名が死亡する事故も発生しました。
8月13日には北部ハルキディキ地方のカッサンドラ半島シビリのリゾート地で火災が強風により勢いを増し、ギリシャ沿岸警備隊によると481人が海路で避難しました(シビリ海岸からサニへ285人、高速船でテッサロニキ港へ196人)。200人以上の消防士が消火活動に投入されました。
ギリシャ市民保護総局によると、8月13日だけで40件の森林火災が発生し、8月1日以降では500件以上、5月1日の火災シーズン開始以降では約2,700件に上っています。今回の算定対象期間(7月28日〜8月16日)内の犠牲者は7名(クレタ島での消防士2名、ペロポネソス半島での消防士1名(いずれも7月29日)、アッティカの消火ヘリ事故による乗員2名(8/2)、及び8月16日の高齢の夫婦2名)と確認されています。この7名の情報は、被害の実態を示す参考情報として掲載しているものであり、後述する人的影響の経済価値評価額(下記「人的影響の経済価値評価は約45億円」参照)は、この7名を対象に個別集計したものではなく、人口全体を対象とする統計モデルによる別推計です。なお、算定対象期間の前にあたる7月1日にも、ギリシャの山火事で父子2名が死亡していますが、これは今回の試算対象には含まれない背景情報です。
資産損失が全体の半数を占める 約111億円
ウェザーニューズの試算では、社会・経済的影響額約218億円(約1.34億ユーロ)のうち、約111億円(約0.68億ユーロ、全体の50.8%)を住宅・交通インフラ・生活インフラの被害(資産損失)が占め、最大の費目となっています。この資産損失は、焼失面積(報道引用で約30,000ヘクタール以上)を国土面積で割った割合や建設コスト指数等を用いて、国全体の建物・インフラ資産価値から焼失範囲に相当する分をトップダウンで概算したものであり、個々の焼失棟数や資産単価を積み上げた実測ベースの算定ではありません。なお、農地の被害は農林水産業(別カテゴリー、約22億円)、観光施設の被害は経済活動(別カテゴリー、約11億円のうち一部)でそれぞれ算定しているため、この資産損失には含まれていません。
人的影響の経済価値評価は約45億円
人的影響(死亡・疾病・労働能力低下等の経済価値評価)は約45億円(約0.27億ユーロ、全体の20.5%)です。このうち大部分を占めるのは、山火事による大気汚染や高温等の健康リスクの高まりを、ギリシャの人口全体に対する超過死亡率の上昇として捉え、統計的生命価値(VSL)で経済価値換算した分(約40億円、約0.24億ユーロ)です。これは、人口・超過死亡率・VSL・年齢構成補正等を用いた全ハザード共通モデルによる統計的な推計であり、前項で記載した算定期間内の7名の犠牲者を直接カウントしたり、個人別に換算したものではありません。
農業・観光への影響
農林水産業への被害は約22億円(約0.14億ユーロ、10.2%)、観光を含む経済活動への影響は約11億円(約0.07億ユーロ、4.9%)です。避難指示が出された地域では、観光施設や観光客の受け入れにも影響が生じています。
公共施設・通信インフラへの影響 約21億円
消火・避難対応にあたった行政機関の対応コストや、被災後の公共施設の復旧関連として、公共財政への影響は約15億円(約0.09億ユーロ、全体の7.0%)と算定しています。また、通信線の断線や基地局の被災等に伴う通信・ITインフラへの影響は約6億円(約0.03億ユーロ、全体の2.5%)と算定しています。この2つの費目を含めた全ての費目(資産損失・人的影響・農林水産業・経済活動・環境・公共財政・通信ITインフラ)の合計が、全体の社会・経済的影響額約218億円となります。
環境への影響 約9億円
焼失面積(報道引用で約30,000ヘクタール以上)をもとに算定した環境・森林への影響は約9億円(約0.06億ユーロ、4.1%)です。この評価には、森林の存在価値(森林資産価値)や、供給・調整・文化的サービスに区分される生態系サービス(CO2の固定機能や水源の浄化機能を含む)を含んでいますが、土壌の栄養循環など、土壌そのものが持つ機能は、二重計上を避ける観点から対象外としています。また、山火事後の復旧・再植林費用は、政府の対応コストとして公共財政(別カテゴリー)側で計上する設計となっています。
なぜ延焼が拡大したのか
出火の原因は火災ごとに異なりますが、記録的な高温と乾燥に加えて、最大125km/h(約35m/s)に達するような強風が繰り返し発生したことで、発生した火災が急速に延焼しやすい状況となりました。強風は消火活動の妨げにもなりました。また、クレタ島・パロス島・アッティカ・ハルキディキなど、複数地域で同時期に火災が発生したため、広範囲での消火・避難対応が必要となりました。
気象情報の活用が被害低減につながる
気象情報により山火事発生につながる強風や乾燥のリスクを事前に把握し、消火資源の配置判断や避難のタイミングに活用することで、被害の軽減につながると考えられます。最新の気象情報を活用して山火事発生に対する先のリスクを知り、早めに備えていくことを心がけてください。
算出根拠と推計方法
本試算は、気象観測データや人口統計、統計的生命価値(VSL)等の指標を用いた独自の経済価値評価モデルにより算出しました。資産損失は、焼失面積の国土に対する割合や建設コスト指数等を用いて、国全体の建物・インフラ資産価値から焼失範囲に相当する分をトップダウンで概算したものです。人的影響は、人口、超過死亡率、VSL、年齢構成等を用いたモデルにより経済価値換算しているため、実際の死者数を直接入力した推計ではありません。このことから、統計モデルによる人的影響の経済価値評価額は、実際に確認された死者数などの被害実績とは必ずしも一致しません。環境への影響は、森林の存在価値と生態系サービス(CO2固定・水源浄化等を含む調整サービスを含む)を対象とし、土壌そのものの評価や復旧・再植林費用(公共財政側で計上)は含まれません。本試算は公的機関による確定被害額ではなく、ウェザーニューズが独自に実施した速報推計である点にご留意ください。
出典・引用元
火災発生状況・避難情報: ギリシャ市民保護総局、ギリシャ沿岸警備隊、ギリシャ消防庁、報道各社(2026年7〜8月時点)
森林火災・焼失面積統計: 複数報道(EFFIS European Forest Fire Information System / Copernicus 引用)2026年8月時点でギリシャ全土の焼失面積は約30,000〜32,000ヘクタールと报道されています。本試算では安全側の下限値として「約30,000ヘクタール以上」を採用しています
気象観測データ: EMY(ギリシャ国立気象局)
統計的生命価値(VSL)参考値: OECD
被害状況: ウェザーニューズ独自分析(2026年8月時点)
※本試算はウェザーニューズの独自分析により算出した推計です。確定被害額ではありません。速報(2026年8月27日時点)。今後の公式被害データの反映により数値は変動する可能性があります。

























