【概要】
タイ中部を中心とした大雨により、首都バンコクとその周辺で広い範囲が冠水しました。大雨の原因は、熱帯収束帯(ITCZ)上で発達し、対流圏の下層から上層まで循環を持つ背の高い低気圧です。スワンナプーム国際空港(VTBS/BKK)とドンムアン国際空港(VTBD/DMK)は運用を続けていますが、空港へ向かう道路の冠水やグランドハンドリング要員の不足により、便の遅延や手荷物の遅れが出ています。低気圧はすでにバンコクから西へ離れ、大雨のピークは過ぎたとみられます。ただし、バンコク上空には寒気が入っており、大気が不安定なため、雷雨(TSRA)が発生しやすい状態が続いています。
【タイ全国の被害状況】
タイ内務省防災・減災局(DDPM)が2026年9月28日(月)18時(現地時間)に発表した報告書第542号(仏暦2569年)によると、タイでは9月16日(水)から28日(月)までの大雨などにより、広範囲で洪水が発生しました。これまでに41県とバンコク都で、約92万7,000世帯、約256万人が被災し、23人が死亡しました。
洪水は214郡、1,017地区、5,164村に及び、死者23人が確認されています。負傷者は報告されていません。
9月28日(月)18時時点でも、28県とバンコク都で洪水が続いています。現在も160郡、849地区、4,685村で浸水などの被害が発生しており、約92万1,000世帯、約255万人が影響を受けています。
参考: タイ内務省防災・減災局(DDPM)「報告書第542号」(2026年9月28日)

【バンコクの被害状況】
バンコクでも50区で洪水が発生しており、9月24日(木)の午後から27日(日)の午後まで約3日間、雨がほとんど止み間なく降り続きました。市内の主要な運河は満水となり、中心部から東部を中心に道路が冠水して交通がまひしました。バンコク都庁の2026年9月28日(月)付の発表によると、洪水の影響は約32万9,000世帯(約70万人)に及んでいます。特にラートクラバン、バーンカピ、カンナー・ヤーオなどの地区で被害が大きく、主要運河の水位を下げる作業や道路・住宅地の排水作業が続いています。
参考: タイ政府広報局(PR Thai Government)「Bangkok Flood Update 28 Sept: Rain Easing, 700K Affected」(2026年9月28日)
【気象要因 ITCZ上で背の高い低気圧が発達】
タイ中部では、熱帯収束帯(ITCZ)に対応する東西方向のシアライン上で低気圧が発達し、バンコク周辺に停滞しました。この低気圧は、対流圏下層から上層まで広がる、背の高い構造を持っていました。
低気圧の周辺には暖かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が不安定となったことで、積乱雲が発達しやすい状況が続きました。こうした気象条件により、タイ中部や東部を中心に活発な雨雲が次々と発生・通過し、広範囲で大雨となりました。
【航空への影響】
スワンナプーム空港(VTBS/BKK)とドンムアン空港(VTBD/DMK)では、航空輸送業務が継続されています。一部の便に遅延が発生しているものの、両空港とも大規模な旅客滞留は確認されていません。
スワンナプーム空港では、主要なアクセス道路は通行できるものの、ラートクラバン経由のルートは冠水が深刻です。空港と市内を結ぶエアポート・レール・リンクは運行を続けています。一方、グランドハンドリング要員の一部が出勤できず、空港で人員が不足しており、便の遅延や手荷物の遅れにつながっています。
ドンムアン空港では、終日続いた強い雨で南側の誘導路の一部に水が流れ込みました。しかし、タイ運輸省によると、洪水による空港全体の運用への影響はなく、航空機の離着陸は通常どおり行われています。
タイ民間航空局(CAAT)は、両空港を利用する旅客に対し、移動時間に余裕を持つこと、航空会社に直接フライトの運航状況を確認すること、また、天候が不安定な間は最新情報を確認することを呼びかけています。
洪水や交通の混乱により予定どおりに移動できない旅客に対し、航空各社も支援措置を講じています。各航空会社の規定や条件に応じて、旅程の変更や、未使用の航空券代金をトラベルクレジットとして保持し、後日利用することが認められる場合があります。

【現在の影響と復旧状況】
タイ運輸省は緊急洪水対応センターを設置し、道路、鉄道、水運、航空の各分野で24時間体制の調整を行っています。また、冠水地域には排水ポンプ車やレッカー車などの機材を派遣しています。
都市鉄道のMRTブルーライン、パープルライン、イエローライン、ピンクラインは通常どおり運行しています。一方、タイ国鉄の東線では一部区間で運行が調整されているほか、ドンムアン空港へのアクセスを担うレッドラインも一時運休しましたが、すでに運行を再開しています。
【今後の見通しと空港運用への影響】
低気圧は今後さらに西へ進み、ミャンマーからアンダマン海へ進むと予想しています。バンコク周辺では、組織的な大雨が再び起きる可能性は低い見込みです。一方で、低気圧が離れた後のバンコク上空には冷たい空気が入っています。地上付近はまだ暖かく湿っているため、上空との気温差が大きくなり、大気の状態が不安定になっています。このため、午後から夜にかけて局地的に発達した積乱雲による雷雨(TSRA)が起きやすくなっています。
空港運用では、今後、長時間の大雨による新たな冠水リスクは低下する見込みですが、雷雨による航空運用への影響には引き続き注意が必要です。空港周辺で雷が発生した場合、地上作業の一時中断や、到着便の上空待機(ホールディング)、出発便の遅延、積乱雲を回避するための飛行経路の変更などが生じる可能性があります。

























