千葉市は都市の中心部や広大な自然環境の内陸部から沿岸部まで、特性の異なる6つの行政区から成り、台風による河川水位の急上昇や沿岸部の高潮リスクなど、多様な防災課題を抱えています。そんな千葉市の危機管理部の現場では、荒天時に「いつ」「どのレベルで」対応を強化すべきかという判断に、自治体向けに特化した気象情報「ウェザーニュース for business」が活用されています。約100万人の市民の安全を支える防災の裏側について、千葉市総合政策局 危機管理部 主査の加納氏と主事の村松氏にお話を伺いました。
早すぎても遅すぎてもいけない、周知のタイミングと表現が課題だった
千葉市の防災対応において、これまで課題になっていたのが「判断や周知のタイミング」だったといいます。2019年9月の令和元年房総半島台風では、最大瞬間風速57.5m/sという記録的な暴風が屋根の損壊や倒木を引き起こし、長期間の停電、断水や通信途絶が発生。さらに翌月、令和元年東日本台風の接近で被害がより深刻化し、従来の想定が通用しない現実を突きつけられました。
「これらの災害は『これまでの前提が通用しない』という現実を突きつけられた出来事です。災害は想定どおりに来るものではないと身をもって感じました。
一方、事前に周知することは重要ですが、結果的に何も起こらなかった場合、次の注意喚起が伝わりにくくなるという懸念もあるので、周知のタイミングと表現には慎重な見極めが求められます」(加納氏)
特に千葉市は6つの行政区によって、地形やリスクが異なるという特徴もあります。
「沿岸部の美浜区では高潮、内陸の緑区では河川氾濫、さらに土砂災害のリスクも地域ごとに異なります。市域が広大でエリア毎の気象特性が異なるため、判断に難しさを感じていました」(加納氏)
実際、緑区を流れる村田川では過去に浸水被害が発生しており、エリアごとの細かな監視が不可欠となっています。こうした状況の中で求められていたのは、「誰が見ても、同じ判断ができる仕組み」でした。

千葉6区の災害リスクを自動判定、警報級の大雨・強風をスマホから即把握
現在、千葉市が重視しているのは「迅速な事前準備」と「判断の標準化」だといいます。「ウェザーニュース for business」の「体制判断」機能はこれらの助けになり、「職員を何人招集するか」「避難所を開設するか」といったことを、個人の経験や勘だけに頼らず、客観的なデータに基づいて行うための判断材料の一つになっているそうです。

「体制判断」機能は、千葉市独自の判断基準や過去の災害傾向を考慮した上で、72時間先までの災害リスクを独自のスケールで可視化します。これにより、職員が「いつ、どのような規模の体制を敷くべきか」を迷わず判断できるようサポートします。

また、「実況監視」機能では、雨量や河川水位の変化をリアルタイムで把握できます。複数の監視地点を一括で、かつ行政区ごとに確認できるため、「今どこが危険か」を瞬時に知ることができます。
「6つの区ごとにリスクの違いを把握できるため、先回りして準備できるのは大きなメリットです。さらに、スマートフォンからアクセスできるようになったことで、職員が場所や時間を問わず情報を確認できるようになったのも便利な点です」(村松氏)
こうした“いつでもどこでも確認できる環境”が、市民を守る防災対策の初動スピードを格段に速めています。

「経験の差」による判断のバラつきを解消。根拠あるデータで災害対策本部の意思決定を迅速かつ的確に
自治体向けに特化した「ウェザーニュース for business」導入後は、事務作業の効率化という面でも大きな効果を発揮しているそうです。
「これまでは複数のサイトから情報を集めていましたが、今は気象解説データをそのままPDF化して災害対策本部の会議資料に活用できます。判断の根拠をビジュアルで明確に示せるため、本部への報告や資料作成などのスピードが格段に上がりました。従来から活用していた気象データもあわせて確認することで、複数の視点で判断しています」(加納氏)
また、属人化の解消という面でも手応えを感じているといいます。
「客観的な数値やグラフをもとに判断できるため、新たに配属された職員でも、ベテランと同様の的確な対応が可能になりつつあります。経験の差による判断のばらつきが減ったことは、組織全体の防災力を底上げする上で非常に大きな変化です」(村松氏)

防災からイベント運営まで、行政運営全体の安全を支える気象情報へ
気象情報の活用は危機管理部内にとどまらず、行政運営のさまざまな場面へ広がり始めています。
「現状ではアカウント数の制約もあり、すべての職員が同じ情報を見られるわけではありません。 ですが、今後職員が誰でも同じように判断できる環境を整えることは、市民の安全を守るためにも重要だと考えています」(村松氏)
実際、選挙の設営や花火大会、成人式といった行事の際に、担当部署から開催判断の相談を受ける場面が着実に増えているといいます。
「選挙の日に積雪予報が出た際には、他部署の職員にもオンラインの気象解説会を共有して、各部署が自律的に動くための判断材料としました。(村松氏)

「天災はいつ起こるかわかりません。だからこそ、専門的な知見を庁内で共有し、迅速に同じ判断ができる体制をつくることができれば、行政サービス全体の安全性を高めていけると感じています」(村松氏)
経験に左右される防災から、気象データに基づく防災へ。過去の災害による教訓をデータに変えて、これからの市民の安全に活かす取り組みは、約100万市民の暮らしを支える基盤となっています。

































