四国最大の人口を擁し、瀬戸内海の島々から険しい山間部まで多様な地形を持つ愛媛県松山市。松山市危機管理課では、市民の安全を守るための防災計画の策定や訓練、備蓄物資の整備、災害時の本部運営など多岐にわたる業務を担っています。 同市では、気象庁からの情報に加え、よりピンポイントで精度の高い意思決定を行うため、「ウェザーニュース for business」を導入。市独自の判断基準に組み込むことで、迅速な初動対応と市民への避難情報の提供に役立てています。
導入の経緯や実際の運用体制について、松山市危機管理課の二宮達司氏と田中智裕氏にお話を伺いました。
局地的な避難判断の迷いをどう無くすか?松山市が「もう一つの根拠」にウェザーニューズを選んだ背景
松山市がウェザーニューズのサービスを導入したのは平成17年にさかのぼります。 背景には、災害時に避難情報を発令する際、気象庁からの公的な情報だけでは、局所的な判断を下すのに苦慮する場合があったという課題があります。
「以前は気象台からの情報が主でしたが、インターネットの普及や気象精度の向上に伴い、判断の拠り所となる情報をもう一つ持ちたいと考えたのがきっかけです。
たとえ結果的に被害が出なかったとしても、市民の命を守るために『空振りを恐れず判断する』ことが求められます。決断を後押しする多角的な根拠を求めていました」(二宮氏)

気象台からの情報は、リスクを考慮して慎重な表現になることがありますが、ウェザーニューズからの情報は明確な数値データとして示されます。
「我々としては、『よりダイレクトで生の判断材料』が欲しい。現場判断においては、ウェザーニューズの情報は気象台と同じ、場合によってはそれ以上に重要視しています」(二宮氏)
エリアごとに、職員参集や避難所開設の「明確な判断基準」を構築
松山市では、広大な市域を「市街地」「山間部」「島しょ部」の3つのエリアに細分化。それぞれの地域特性に最適化された災害リスクスケールを職員の参集基準などに採用しており、警報が発表される数日前の段階から、早期注意情報や直近のピンポイント予測を活用しているそうです。
「ウェザーニュース for business」ではエリアごとの細かな予測を一元的に確認できるため、「まずは土砂災害の危険が高い山間部でリスクが上昇し、その後に市街地へ波及する」といった時系列の予測が立てやすくなり、地域の実情に即した体制構築が可能になったと話します。
「警戒すべきエリアのアラートが飛び、対象となる班の職員の参集を判断します。このデジタル連携により、夜間や休日であっても情報伝達のタイムラグを最小限に抑えることができています」(田中氏)

とくに、夜間に大雨が予想される場合には、明るいうちに自主避難所を開設するための判断材料として重宝しているといいます。
「『大雨注意報が発表されている場合で、市街地の災害リスクスケールのレベルがいくつになれば…』というように、職員の参集基準を明確に定めています。2日前からリスクを注視し、最適な避難誘導のタイミングを見計らっています」(二宮氏)

休日・夜間でも迷わず動ける。危機管理課の集結スピードを変えたスマホアプリ
松山市では危機管理課を含む、防災危機管理部の全職員に「ウェザーニュース for business」のIDを配布。以前のサービスではできなかった、各々のスマートフォンからリアルタイムで災害リスクスケールを監視できる環境を整えたことで、組織全体が迷いなく動ける体制を実現しています。
「パソコン版は画面構成が良く、台風接近時などに全国の状況を俯瞰するのに最適です。一方、アプリ版はプッシュ通知が豊富で操作もしやすいため、職員が業務外でも日常的に情報をチェックする習慣がつきました。何よりもこの『親しみやすさ』が、いざという時の迅速な動きにつながっていますね。気象情報を『自分事』として捉え、防災に対する意識が常にアップデートされています」(田中氏)
休日や夜間、自宅であっても、正式な参集連絡が来る前に「体制判断」機能のプッシュ通知でリスクを察知し、出勤の準備ができるようになったことで、現場への集結スピードも向上したそうです。
気象情報で「市全体の防災力」の底上げを目指す
危機管理課内にとどまらず、市全体の行政サービスへの応用も有効だと考えています。
「例えば保健所の業務や健康医療など、気象リスクが影響する他部署の業務にもこのコンテンツを活かしていければ、市全体の防災力の底上げになると考えています」(二宮氏)
さらに、精度の高い情報を出すだけでなく、市民にどう動いてもらうかという課題にも向き合い続けます。
「適切なタイミングで情報を出すのはもちろん、それを市民にどう受け取ってもらい、実際の避難行動につなげてもらうか。平時からの啓発活動と合わせ、より信頼される情報発信を目指していきたいです」(二宮氏)
松山市は気象情報を市民の命を守るための鍵と考えています。最新のテクノロジーを組織に浸透させることで、市全体の防災力のさらなる向上に挑みます。































