2018年にオープンした、オフィスや商業施設、映画館などからなる大規模複合施設「東京ミッドタウン日比谷」。ここでは、従来の天気予報では予測しきれなかった「ビル風」に立ち向かうために「ウェザーニュース for business」の「超高解像度予測」を採用。業界最高レベルの5m四方の高解像度で建物の影響も考慮した風の予測を安全対策に活用し、快適な空間づくりを進めています。都市気象予測を導入した背景や活用法について、三井不動産ビルマネジメント株式会社 東京ミッドタウン日比谷オフィスの杉本譲氏にお伺いしました。
イベント時のリスクをどう防ぐかが課題だった
東京ミッドタウン日比谷は日比谷公園に隣接し、なかでも1階のイベント広場では近隣のビルに当たる風の通り道となるという特性を持っています。
「とくに春先は風が強まる傾向があり、設営に用いる資機材が置かれたイベント広場では、『思いがけない突風によるリスクが生まれるスペース』としてイベント開催時には注意が必要でした」(杉本氏)
実際、一般的な天気予報では安全圏とされる風速3~5m/sと予測が出ていても、イベント広場に吹いた突風によりイベント備品、資機材などが飛ばされる危険があったといいます。そこで安全管理上の懸念から、より高精度で現場に即した風の予測の必要性を痛感し、「ウェザーニュースfor business」の「超高解像度予測」のトライアルをスタート。
「『ウェザーニュースfor business』導入の前段階として高性能気象IoTセンサーで現場を実測し、1年間にわたって予測値との綿密な比較検証を行いました。結果、メッシュ精度の高さが実測レベルであることを確認。風をここまで細かく予測できるモデルはほかにはないと確信し、本格活用を決めました」(杉本氏)
34時間先までの予測を確認し、作業計画や安全対策の協議などに活用
「超高解像度予測」は、建物や周辺環境の情報を含む3次元データを取り込んだ超高解像度モデルで、34時間先までの市街地の風の流れを5m四方の高解像度でシミュレーションします。高さについても、地上付近から上空250mまで10m単位で調整可能です。

東京ミッドタウン日比谷では現在、警備スタッフを中心に毎日34時間先までの風速を確認。その情報をもとに、設備スタッフや弊社と連携し、強風が見込まれる場合は仮設資材や什器の固定や撤去、カラーコーンを置いて区画設定をするなど安全対策を協議、決定しています。
「これまでは突風に対して後追いで対応していましたが、今は超高解像度予測をもとに事前に準備ができるようになりました。たとえば、イベント広場でのやぐらやスクリーン、オブジェなどの設置作業は複数日にわたります。超高解像度予測を活用すれば、強風が予想される時間を避けるなど作業計画を調整し、より効果的な施工段取りも実現可能です」(杉本氏)

「事故が起きないこと」こそ最大の成果
「超高解像度予測を導入した成果を数値で測ることは難しいかもしれません。ですが、導入後に風により大きな事故が起きていないことこそが最大の効果ではないでしょうか。これまでのように一般的な天気予報では得られない、超高解像度予測ならではのピンポイントの情報によって事故を未然に防ぐことができているのはたしかです。イベント主催者に対しても、『安全面を重視している施設』という信頼につながり、誘致のアピールポイントにもなっています」(杉本氏)
平地での風予測と比べ、立体的な建物環境における風予測モデルの作成は難しく、多くの試行錯誤が必要になります。四季を通じてエリア内に吹く風の特性をつかむ、1年間にわたる実証実験を経たからこそ得られる、超高解像度予測がたしかな安全性をもたらしていると実感しています。
来場者の安全を守り、イベント誘致や施設の信頼性向上を目指す
東京ミッドタウン日比谷は超高解像度予測以外にも、台風進路・暴風域予測、交通影響予測といった「ウェザーニュースfor business」のさまざまな気象情報を、安全性をより高めるために活用しています。
「とくに交通影響予測は、どのエリアの路線が影響を受けるかを地図上で視覚的に把握できる点が便利です。台風接近の数日前には、弊社をはじめ警備や設備スタッフ、商業テナント対応会社などの関係者が集まり、大型モニターでこれらの情報を確認しながら休業判断や、お客さまやスタッフの移動手段確保、アーリークローズなどの対策を協議しています」(杉本氏)
また、今後はフロアごとに異なる風の傾向に合わせて、超高解像度予測のさらなる検証を重ねつつ、高性能気象IoTセンサー『ソラテナPro』の設置なども含めて、施設全体の安全性を高めていくことも検討中とのこと。
「お客さまに見えないところで安全性を確保するのが、私たちの使命だと考えています」(杉本氏)

東京ミッドタウン日比谷を訪れる来場者の安全を守るだけでなく、イベント誘致や施設の信頼性向上にも寄与している気象データ。今後も見えない風を可視化する挑戦は続いていきます。



































